日韓の 法令に 関すること(など)

日韓の 改め文に 関することを 中心に 調べたことなど(法令以外に 関するものも 含む。)を 書いていく 予定です(ひとまず)。 IE未対応です。

改正規定(前文)

総論

  1. 日本では,現在 憲法を 始めとする いくつかの 法律で,各本条の 前に 当該法律の 制定に 係る 立法事実,その制定の 趣旨や 目的,基本原則を 示す 文章が おかれており,これを 前文という。
  2. このうち,少なくとも 制定の 趣旨や 目的,基本原則については,基本的に 本則で 定めることに 支障はないから*1,全部改正の 折りには,前文を 廃し 本則中に 組み込むことも ある。*2
  3. 前文は,それ自体 具体的な 法規を 定めたものではないから,前文自体が 直接に 法的効果を 生ずることはなく,ただ 当該各条の 解釈の 基準となるに 過ぎない。
  4. なお,法律の 一部である以上,その改正に 立法を 要することは,当然である。
  5. 前文の 意義に 関連して,前文の意義 - 自治体法制執務雑感参照。
  6. また,前文が 主として 当該法令の 趣旨を 述べるものであることから,前文を 「制定文」と 称する 者も あると されるが,これらは,以下の 点において 取扱いを 異に するから,両者の 名称を 混同すべきでは ないだろう。
    1. 教育基本法(平成18年法律第120号)のように,(全部改正の)制定文と 前文とを 有するものが あること
    2. 法律・政令では,制定文は,題名と 目次の 間に おかれ,目次には,「制定文」を 掲げないのに 対し,前文は,題名 及び 目次の 後に おかれ,目次にも 「前文」を 掲げること
    3. 制定文は 根拠条文の 条ずれなどにより 根拠法と 制定文との 間に 齟齬が 生じた 場合にも 改正を 行わない *3のに 対し,前文は 本則の 規定内容の 変更などにより 本則と 前文との 間に 齟齬が 生じた 場合には 必要な 変更を 行いうること

前文

追加

  1. 前文を 新設するには,次のような 方法による。
  2. なお,「次の前文を加える。」とするか,「前文として次のように加える。」とするかについて,衆参の 修正案では 両者とも 見られるが,前文を 加える 唯一の 一部改正法律と思われる 海上衝突予防法の一部を改正する法律(昭和39年法律第157号)では 前者の 方式に よっている。
  3. ほかに,「・・・「ここに、……するため、この条例を制定する。」とする・・・文章を一部改正で追加すること」(前文の追加 - 自治体法制執務雑感)に 違和感を 感じる向きも あるようであるが,(hoti-akさんの 仰るような 観点も あるし,追加ではないが,)附則の 全部改正で「この法律は,[過去の日付]から施行する。」に 全部改正したりも するのであるから,殊更 違和感を 感じる 必要も ないように 思う。

[章区分がある法令の場合]

 目次の次に次の前文を加える。
 昔々あるところに・・・。*4

 

 目次の次に前文として次のように加える。
 昔々あるところに・・・。*5

 

[章区分のない法令の場合]

 題名の次に次の前文を加える。
 昔々あるところに・・・。*6

 

 題名の次に前文として次のように加える。
 昔々あるところに・・・。*7

改正

  1. 前文の 全部を 改めるには,次のような 方法による。
  2. そもそも,一部の 改正を 含め,前文の 改正自体が,法律では あまり 例がない。

 前文を次のように改める。*8

削去

前文の 全部を 削るには,次のような方式による。

 前文を削る。*9

前文の項

総論

  1. 前文の 一部を 改める場合,その段落を 第〇項として 特定することがある*10が,段落までは 特定しないのが 普通である。
  2. 項を 示さない場合の 前文の 改正は,基本的には,目次の 改正に 準じて 行えば 良いと 考えられる*11
  3. 条約などでは,前文の項を 「第〇段落」として 特定するのが 一般的である。
  4. また,最高裁判所平成30年(行ツ)第153号同30年12月19日大法廷判決では「憲法前文第1文前段」との表現が 用いられている。

追加

[段落を特定する場合]

 前文第〇項の次に次の1項を加える。
 おじいさんは川へ洗濯に・・・。*12

 

[段落を特定しない場合]

 前文中「昔々あるところに・・・。」を
「 昔々あるところに・・・。
  おじいさんは川へ洗濯に・・・。」
に改める。*13

 

 前文中「芝刈りに行きました。」の次に次のように加える。
 おばあさんは,川へ洗濯に・・・。*14

改正

[項を特定する場合]

 前文第〇項を次のように改める。
 昔々あるところに・・・。*15

 

[項を特定しない場合]

 前文中「おじいさんは川へ洗濯に・・・。」を「おばあさんは川へ洗濯に・・・。」に改める。*16

削去

[項を特定する場合]

 前文第〇項を削る。*17

 前文中第〇項を削る。 *18

 

[項を特定しない場合]

 前文中「昔々あるところに・・・。」を削る。*19

雑記

韓国法

  1. 韓国法は,特に 民主化以前に 制定された法律では 日本法の 影響が 大きく見られる。
  2. ここでは,前文のある 日本法が,韓国で どのように 継受されているかを 見てみようと 思う。
  3. なお,原文は,法律番号で 検索可能なはずである。

ユネスコ活動に関する法律(昭和27年法律第207号)

(前文)

 日本国民は、国際連合教育科学文化機関が世界平和の確立と人類の福祉の増進に貢献しつつあることの意義を高く評価し、この機関に加盟することによつて得た日本の国際的地位にかんがみ、政府及び国民の活動によりその事業に積極的に協力することを決意し、教育、科学及び文化を通じて、国際連合憲章国際連合教育科学文化機関憲章及び世界人権宣言の精神の実現を図るため、ここにこの法律を制定する。

法律第1335号 ユネスコ活動に関する法律

第1条(目的)大韓民国は,国際連合教育科学文化機構(以下「ユネスコ」という)が国際連合の基本精神に立脚して,世界の諸人民間の無知及び誤解並びに貧困を克服して,人間の心の中に世界平和の基盤を作り,人類の福祉の増進に至大なる貢献をしていることを高く評価し,また大韓民国ユネスコに加盟することによって得た国際的地位にかんがみ,この崇高なるユネスコ活動に大韓民国の政府及び国民が積極的に協力して,敎育・科学及び文化活動を通じて,国際連合憲章ユネスコ憲章及び世界人権宣言の精神を実現するため,この法律を制定する。

法律第8332号 ユネスコ活動に関する法律の全部を改正する法律

第1条(目的)この法律は,国際連合憲章及び国際連合教育科学文化機構憲章並びに世界人権宣言が追求する崇高なる精神を具現するため,大韓民国の政府及び国民が国際連合教育科学文化機構の活動に積極的に参与するようにし,その活動を支援するため必要な事項を定めることを目的とする。

*1:例えば,ハンセン病療養所入所者等に対する補償金の支給等に関する法律(平成13年法律第63号)の 前文は,「 ハンセン病の患者は、これまで、偏見と差別の中で多大の苦痛と苦難を強いられてきた。我が国においては、昭和28年制定の「予防法」においても引き続きハンセン病の患者に対する隔離政策がとられ、加えて、昭和30年代に至ってハンセン病に対するそれまでの認識の誤りが明白となったにもかかわらず、なお、依然としてハンセン病に対する誤った認識が改められることなく、隔離政策の変更も行われることなく、ハンセン病の患者であった者等にいたずらに耐え難い苦痛と苦難を継続せしめるままに経過し、ようやく「らヽいヽ予防法の廃止に関する法律」が施行されたのは平成8年であった。
 我らは、これらの悲惨な事実を悔悟と反省の念を込めて深刻に受け止め、深くおわびするとともに、ハンセン病の患者であった者等に対するいわれのない偏見を根絶する決意を新たにするものである。
 ここに、ハンセン病の患者であった者等のいやし難い心身の傷跡の回復と今後の生活の平穏に資することを希求して、ハンセン病療養所入所者等がこれまでに被った精神的苦痛を慰謝するとともに、ハンセン病の患者であった者等の名誉の回復及び福祉の増進を図り、あわせて、死没者に対する追悼の意を表するため、この法律を制定する。」
となっているが,第3項については,第1条の趣旨規定に 組み込むことが 可能であろう。
反対に 第1項・第2項は,本則に 組み込むには 些か 不自然であろう。このように 単に 事実を 摘示するに 留まるような場合には,前文に 示すことが 適当と言えよう。

*2:例えば,ワークブック法制執務では,警察法(昭和22年法律第162号)の 前文が,警察法(昭和29年法律第162号)による 全部改正で 廃され,同様の 趣旨が (本則)第1条の 目的規定に 取り入れられた 例を 挙げる。

*3:ただし,戦後 すぐのものには 改正を 行った 例が ある(大藏省設置法等の施行に伴う政令等の整理に関する政令(昭和24年政令第149号)第19条・第47条参照。)。

*4:海上衝突予防法の一部を改正する法律(昭和39年法律第157号)参照。「次の前文を加える。」の部分に限る。

*5:閣法 第142回国会 84 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律案に対する修正案(長勢甚遠君外四名)参照。

*6:霧島市議会基本条例の一部を改正する条例(平成27年霧島市条例第36号)参照。

*7:用例なし。

*8:平成29年厚生労働省告示第69号参照。

*9:中小企業基本法等の一部を改正する法律(平成11年法律第146号)第1条参照。

*10:国会等の移転に関する法律の一部を改正する法律(平成8年法律第106号)及び文化芸術振興基本法の一部を改正する法律(平成29年法律第73号)参照。

*11:ワークブック法制執務では,「前文中に新たな段落を追加する場合には,直近の段落を示し,これを改めるという形で,追加される段落を併せ示すという方法を用いることが考えられる。」とするが,段落を削る場合については,記述がない。

*12:国会等の移転に関する法律の一部を改正する法律(平成8年法律第106号)参照。

*13:用例なし。

*14:平成23年厚生労働省告示第478号参照。

*15:中心市街地の活性化を図るための基本的な方針の一部変更について(平成28年4月1日閣議決定)参照。

*16:平成19年国土交通省告示第1229号参照。

*17:用例なし。

*18:昭和23年大藏省・商工省告示第40号参照。

*19:用例なし。