日韓の 法令に 関すること(など)

日韓の 改め文に 関することを 中心に 調べたことなど(法令以外に 関するものも 含む。)を 書いていく 予定です(ひとまず)。 IE未対応です。

韓国の改め文について/全7件(5.関連性のある法令をともに改正する方式)

韓国法制処*1 『法令立案・審査基準』(2022年12月版)第3編第2章(法令の改正方式と廃止方式)より、「5.関連性のある法令をともに改正する方式」を 訳出する。

5.関連性のある法令をともに改正する方式

イ.必要性

法令を改正するときは、1個の法令を対象として改正することが原則であり、2以上の法令を改正するときには、改正法令案を別途立案して改正することが原則である。
しかし、ある法令を改正するとき、当該改正事項と関連する他の法令の規定を同時に改正しなければならない場合がある。例えば、「政府組織法」を改正して中央行政機関として女性家族部を新設し、女性家族部長官に対し保健福祉家族部長官が行っていた業務の一部を分掌させる場合、 各個別の法律による保健福祉家族部長官の所管事項中女性政策に関する権限を女性家族部長官の所管事項に改正すべき必要があり、これは、同時に改正しなければならない。

この場合、各々別途の改正法律案により改正すると、法令改正の時差が発生する素地があり、これによる施行上の混乱がもたらされるのみならず、別途の立法手続による非経済性・非能率性をもたらす。このような点を防止するため、必要があれば、2以上の法令の改正案を1個の改正法令案に含めて改正する。

また、国家財政に負担となる特例規定等を個別法律で乱設することを防止するため、「この法律によるのでなければ~~~をすることができない」という規定を置き、当該法律以外の他の法律の改正のみによって特例が新設されないよう制限する場合がある。例えば、「土地利用規制基本法」第5条は、同法別表に規定する地域・地区等、他の法律の委任により大統領令に規定する地域・地区等であって、この法律の大統領令に規定する地域・地区等以外には、地域・地区等の新設を制限する規定を置いているから、他の法律で地域・地区を新設するには、「土地利用規制基本法」別表を同時に改正しなければならない。特に、「国有財産特例制限法」及び「公益事業のための土地等の取得及び補償に関する法律」は、上記のような規定を置くとともに、「この法律以外の他の法律により改正することができない」という規定を追加で置いている。この場合には、個別法律で「他法改正方式」を通じて改正することができず、個別法律の改正案とともに当該法律の改正案を国会に同時に提出しなければならない。

[個別法律による特例等の新設を制限する法律]

根拠法律 制限内容 関連条項
国家財政法 特別会計の設置

第4条(会計区分)③ 特別会計は、国において特定の事業を運営しようとするとき、特定の資金を保有し、運用しようとするとき、特定の歳入により特定の歳出に充当することにより一般会計と区分して会計処理する必要があるときに法律で設置するが、別表1に規定された法律によるのでなければこれを設置することができない。

基金の設置

第5条(基金の設置)① 基金は、国が特定の目的のために特定の資金を柔軟に運用する必要があるときに限り法律で設置するが、政府の出捐金又は法律による民間負担金を財源とする基金は、別表2に規定された法律によるのでなければこれを設置することができない。

国有財産特例制限法 国有財産特例の新設

第4条(国有財産特例の制限)① 国有財産特例は、別表に規定された法律によるのでなければ定めることができない。

② この法律の別表は、この法律以外の他の法律により改正することができない。

公益事業のための土地等の取得及び補償に関する法律 土地の収用・使用の新設

第4条の2(土地等の収用・使用に関する特例の制限)① この法律により土地等を収用し、又は使用することができる事業は、第4条又は別表に規定された法律によるのでなければ定めることができない。

② 別表は、この法律以外の他の法律により改正することができない。

農地法 農地所有特例の新設

第6条(農地所有の制限)④ この法律において許容された場合以外には、農地所有に関する特例を定めることができない。

負担金管基本法 負担金の新設

第3条(負担金設置の制限)負担金は、別表に規定された法律によるのでなければ設置するができない。

租税特例制限法 租税特例の新設

第3条(租税特例の制限)① この法律、「国税基本法」及び条約並びに次の各号の法律によるのでなければ租税特例を定めることができない。

1.~25.(省略)

地方税特例制限法 地方税特例の新設

第3条(地方税特例の制限)① この法律、「地方税基本法」、「地方税徴収法」、「地方税法」、「租税特例制限法」及び条例によるのでなければ「地方税法」で定める一般課税に対する地方税特例を定めることができない。

地方財政 地方債発行の新設

第11条の2(地方債発行の制限)地方債は、この法律及び次の各号の法律によるのでなければ発行することができない。

1.~21.(省略)

土地利用規制基本法 地域・地区等の新設

第5条(地域・地区等の新設の制限等)地域・地区等は、次の各号に規定するもの以外には、新設(地域・地区等を細分し、又は変更することを含む。以下同じ。)することができない。

1.別表に規定する地域・地区等

2.他の法律の委任により大統領令に規定する地域・地区等であって、この法律の大統領令に規定する地域・地区等

3.他の法令の委任により総理令、部令及び自治法規に規定する地域・地区等であって、国土交通部長官が官報に告示する地域・地区等

ロ.改正方式

2以上の法令を1個の改正法令案に含めて改正する方法としては、ⅰ)附則で改正する方式:A法を改正するとともにA法一部改正法律案の附則でB法の関連条項を改正する方式とⅱ)本則で改正する方式:A法とB法をともに本則で改正する方式がある(一括改正法令案を作成する方式)。

ハ.法令の題名

  1. Aという法令を制定し、又は改正するとともに、附則でBという法令を改正する場合には、法令の題名にB法令の改正を表示する必要はない。要するに、附則で他法令を改正する場合にも、法令の題名は、附則で他法令を改正しない法令と同様である。
  2. Aという法令を制定し、又は改廃する際に、B、Cという数個の関係法令の規定を同時に改正すべき必要があるが、これらの原因を起こした法令の附則で改正するには、改正内容が重要で不適当である場合や、数個の法令が1つの共通する動機に基づき改正されるが、両者の改正の必要性の面において因果関係がなく、並列的である場合には、別途法律の制定の形式を取り、その本則で改正するようにする。この場合、題名は、次の例を参考にして、適切に付するようにする。

[例示]

「~のための○○個法律(法令)の一部改正に関する法律案(大統領令案、○○部令案)」*2

ニ.改正文の表現方法

イ)附則で他の法令を改正する場合には、「(他の法令の改正)」のような条見出しを付し、改正される法令が多数である場合には、法令別に各々項を分けて改正文を作成する。

[立法例]附則で一つの法令を改正した事例

個別消費税法〔訳註:一部改正法律〕

附 則

(法律第12157号、2014年1月1日)

第6条(他の法律の改正)教育税法中一部を次のように改正する。

第3条第2号中「イ目・ロ目・ホ目及びト目の物品」を「イ目・ロ目・ホ目・ト目及びリ目の物品」にする。

[立法例]附則で2以上の法令を改正した事例

国立大学歯科病院設置法

附 則

(法律第8637号、2007年10月17日)

第14条(他の法律の改正)①国立大学病院設置法の一部を次のように改正する。

第1条中「医学及び歯医学」を「医学」にする。

第4条第1項第5号中「医学、歯医学及び薬学」を「医学及び薬学」にする。

第5条第1項中「歯医学科、薬学科又は製薬学科」を「薬学科又は製薬学科」にする。

第6条中「病院」又は「歯科病院」を「病院」にする。

第9条第2項中「医科大学長及び歯科大学長(歯科大学が設置されている場合に限る)」を「医科大学長及び関連大学の歯科病院長(当該学校に歯科病院が設立されている場合に限る)」にする。

② 韓国教職員共済会法の一部を次のように改正する。

第7条の2第2項第4号中「国立大学病院設置法」を「「国立大学病院設置法」・「国立大学歯科病院設置法」」にする。

ロ)本則で複数の法令を改正する場合には、各改正対象法令別に条をおき、改正指示文を付する。各条ごと「(○○法の改正)」のように条見出しを付して改正文を作成する。

[立法例]本則で他の法令を改正した事例

中央行政権限及び事務等の地方一括移譲のための物価安定に関する法律等46個法律の一部改正のための法律
(法律第17007号、2020年2月18日)

第1章 企画財政部所管

第1条(「物価安定に関する法律」の改正)物価安定に関する法律の一部を次のように改正する。

第3条中「主務部長官は」を「主務部長官又は特別市長・広域市長・特別自治市長・道知事・特別自治道知事(以下「市・道知事」という。)は」にし、同条にただし書を次のように新設する。

(以下省略)

第2章 教育部所管

第2条(「経済自由区域及び済州国際自由都市の外国教育機関設立・運営に関する特別法」の改正)経済自由区域及び済州国際自由都市の外国教育機関設立・運営に関する特別法の一部を次のように改正する。
第5条第1項を次のようにする。

(以下省略)

第3条 以下省略

ホ.改正の限界

1)改正法令間の関連性

2以上の法令の改正を一つの一部改正法令案に含めて改正することは、改正しようとする2以上の法令間に次のような関連性がなければならない。

イ)附則改正方式による場合

附則で他の法令を改正する立法形式は、ある法令の制定・改正又は廃止に伴い、附随的に他の法令を改正する必要が発生した場合に認められるから、字句の修正や軽微な事項の改正等の整理を行う程度の改正に限られる(第2編第5章9. 他の法令の改正に関する規定参照)。

ロ)本則改正方式による場合

複数の法令を一つの改正法令案の本則に含めてともに改正することは、例外に属することで、改正される各法令の施行日が同一であるか互いに近くなければならないことのほかに、次のいずれかに該当しなければならない。

  1. 改正される各法令の規定している対象が、同一又は同質的であり、改正される各法令の改正趣旨が同一であること。
  2. 予算や行政制度の改変に伴い、同一であるか関連性の深い政策を一括で遂行するのに必要な場合で、関係法令を改正する必要があること。

2)改正法令の種類の同質性

2以上の法令を一つの改正法令案に含めて改正する場合、同一の種類の法令同士のみ改正することができ、他の種類の法令を改正することはできない(例えば、法律を改正するとともに、大統領令や部令をまとめて改正することはできない。)。部令であれば、公布権者が同一の部令同士のみ改正することができ、公布権者が異なる部令は、ともに改正することができない。例えば、保健福祉部令を改正するとともに国土交通部令を改正することはできない。

*1:日本の内閣法制局に相当

*2:訳註:2019年4月版以前は、「A法の施行(制定又は改正)に伴うB法等の整備に関する法律案」並びに「A法(律)及びB法(律)一部改正法律案」、「~のための○○法施行令等一部改正令案」及び「~のための○○法施行規則等一部改正令案」という例示がなされていたが、2019年12月版以後、本部分のような例示に変更された。

その背景について、キム・ハンニュル「一部改正方式と一括改正法令の題名」(『法制』2021年12月号、277頁、法制処)によれば、2018年に政府から提出された「中央行政権限及び事務等の地方一括移譲のための物価安定に関する法律等66個法律一部改正法律案」が、「形式上制定案であるにもかかわらず、法律案に一部改正法律案と表記されており、形式と法律案の名称が一致していない」との理由で接受を拒否され、その後、国会の意見に従い、題名を「中央行政権限及び事務等の地方一括移譲のための物価安定に関する法律等66個法律一部改正のための法律案」に修正して再提出されたという出来事が紹介されている。