日韓の 法令に 関すること(など)

日韓の 改め文に 関することを 中心に 調べたことなど(法令以外に 関するものも 含む。)を 書いていく 予定です(ひとまず)。 IE未対応です。

本文のみがある規定に第2項以下を新設する方法等

韓国法制処(日本の内閣法制局に相当)の月刊『法制』2003年6月号から翻訳

  • 区分:法律立案常識
  • 著者:ソン・テス(法制処財政企画官室書記官)

本文のみがある規定に第2項以下を新設使用とする場合に改正文をどのように作成すべきでしょうか?

特殊教育振興法第7条で例を挙げて説明します。

第7条(私立の特殊教育機関への委託教育)国又は地方自治団体は、国立又は公立の特殊教育機関の収容施設が不足し、又は特殊教育対象者の義務教育のため必要な場合には、私立の特殊教育機関にその教育を委託することができる。

従前には、この場合に改正文を次のように作成し、新たな項を新設しました。

第7条に第2項を次のように新設する。

② 第1項の規定による委託教育に関して必要な事項は、大統領令で定める。

すなわち、既存の本文は、自動的に第1項となるものとし、新設される項についてのみ改正文を作成していました。なお、この場合、新旧条文対比表は、次のようにしていました。

新旧条文対比表

現行

改正案

第7条(私立の特殊教育機関への委託敎育)(省 略)

第7条(私立の特殊教育機関への委託敎育)(現行本文と同じ。)

<신 설>

1항의 규정에 의한 위탁교육에 관하여 필요한 사항은 대통령령으로 정한다.

ところで、今後は、この場合の改正文を次のように作成し、一般人の理解の便宜を高めることとしました*1

第7条本文を第1項とし、同条に第2項を次のように新設する。

② 第1項の規定による委託教育に関して必要な事項は、大統領令で定める。

2項以上がある条文から1項のみを残し、残りの条項が全て削除された場合に、残っている項を引用する際、第○条とすべきでしょうか、第○条第○項とすべきでしょうか?

第○条が第1項及び第2項で構成されていたのを、第2項が削除された場合、これを引用する際に第○条第1項とすべきか、又は第○条とすべきかについては、議論の余地があります。第1項を明示すべき必要がないという見解は、①現行法令集の形態*2は、わが国の法令集が吸収加除方式をとっており、最新法令のみを示し旧法令等の改正沿革部分が全く示されない脆弱点を補完するため、改正の沿革を簡単に表示するためのものであるに過ぎず、第○条に第1項がそのまま存在するという意味ではない点、②項がない条に第2項以下を新設する方式において、第○条に第2項ないし第4項を各々次のように新設するとし、現行条文は、自動的に第1項となるものと解しているところ、これを逆に見れば、第○条第1項として明示すべきという見解によればこの場合に改正文を第○条本文を第1項とし、第2項ないし第4項を各々次のように新設するとしなければならないという点を根拠として提示しています。

ところで、第○条第1項とすべきであるという見解によれば、①現行法令集には、第2項が削除された場合にも形式上第1項がそのまま残っており、法令の沿革を知ることができるという長点があり、また多くの国民がその条文を認識するとき現行法令集を基礎として第○条第1項と読み、引用するから、論理上特別の理由がない限り、国民の便宜のために第○条第1項と明示することが望ましい点、②第○条に第1項及び第2項が両方あるとき立法した他の法令では、第○条第1項と引用していたのを、第2項が削除された後他の法令では、第○条第1項とせず、第○条とだけ引用することとなれば、法令間に混乱をもたらすおそれがあり、このような混乱を防止するためには、他法令の改正で第○条第1項を第○条と改正しなければならない問題が発生するが、現在そのようにしていないという点、③第○条に第2項までだけがあるのではなく、第3項ないし第5項等がある場合、第3項のみが残され、残りの条項が削除される場合、このときにも、前の主張通りならば、第○条としなければならないが、これが望ましいのか、或いは、第○条第3項と明示すべきことが望ましいのかを検討する必要があるという点、④原則的に、項がない条において第2項以下を新設する方式は、これを第○条本文を第1項とし、第2項ないし第4項を各々次のように新設するとすることが明確であるという点等を挙げています。

今後は、一般国民の理解の便宜を高めるため、項のない条で第2項以下を新設する場合に、従来とは異なり、第○条本文を第1項とするものとして、改正文を作成することとし、自動的に第1項になっていた従来方式を変更したという点、国民が実際に条文を認識するときには、第○条第1項と読み引用するという点、当該条文を他の法令で引用していたとしても、改正による混乱を予防する必要があるという点等を考慮するとき、第○状第1項と明示することが望ましいと思われます(第1項ないし第5項等数項からなる条から1個の項、例えば第3項のみが残ることとなった場合にも、これを引用する場合には、第○条第3項と引用)。

ただし、数個の項があったうち、1項のみが残ることとなり、項番号を付することが不自然であり、他の法令で引用される場合がほとんどなく、整理する必要があると判断されるときには、条全体を全文改正し、項表示のない本文に改めるが、当該条文を他の法令で引用しているかを必ず確認し、他の法令の改正措置をすべき必要があると思われます。

なお、米国の場合には、法令の改正方式が吸収加除方式ではなく増補式であるから、このような問題が生じず、日本の場合には、第1項が表示されず、第2項から表示され、項が削除される場合、次の項が順次上に繰り上がるためにわが国のような問題は生じないと思われます。

過料条項が改正されたとしても、従前の違反行為者については従前の規定が適用されるよう明確にするには、どのような立法措置をしなければならないでしょうか?

行政上の制裁処分の適用法律は、違反行為の当時に施行されていた法令であるという判例(大判86누63)を根拠として理論構成をすることができるものですが、過料が行政処分と同一視されうるかが不明確な点を勘案し、新旧法令間の関係を明確に規定すべき必要があると思われます。

過料金額が増額され、又は罰則規定に転換される場合には、従前の違反行為については、従前の規定によるという経過措置を置き、過料金額が減額され、又は廃止される場合には、従前の規定によるのか改正された規定を遡及して適用するのかについて立法政策により経過措置又は適用例を置くようにし、解釈上の不必要な議論を遮断することが望ましいでしょう。

過料処分に関して、旧法による必要があるときには、附則で次のような経過措置を置けば良いでしょう。

〈過料処分に関して旧法による必要があるときの立法例〉

第○条(過料処分に関する経過措置)この法律の施行前の違反行為に対する過料処分については、従前の規定による。

この場合、「従前の規定による。」という表現と「従前の例による。」という表現との違いは、「従前の規定による」という場合には、従前の法令の規定を適用するという意味であり、「従前の例による。」という場合には、従前の法令の規定のみならず、その下位法令及び例規・訓令等を全て適用するということをいうから、従前のように処理するという意味を有すると思われます。

〈参考判例

大法院 1987.1.20言渡 86누63 判決【建設業免許処分取消】

旧建設業法(1981.12.31法律第3501号)が施行されていた当時にした建設業免許の貸与行為について行政上の制裁処分をするには、その後全面改正された建設業法(1984.12.31法律第3765号)の附則第1項に、この法律は、1985.7.1から施行すると規定されており、第2項に、この法律の施行前に従前の規定によっておこなされた処分は、この法律の規定により行われた処分とみなすと規定されているのみであり、別に特別の規定をおいていない以上、その違反行為の当時に施行されていた旧建設業法によらなければならないものである。

〔以下翻訳略〕

*1:訳註:現行の『法令立案・審査基準』では、「第○条見出し以外の部分を第1項とし~」とすることとなっている。

*2:訳註:

第1条(見出し)①云々。

②(削除)