問)
準用と適用の区分は?
答)
準用は,ある事項・事件等に関する法令又は規定をそれと類似するが,本質において違いのある事件・事項に対して適用することをいいます。必要な場合,若干の修正を加えて適用する場合もあり,何を何と見なすという規定を置く必要もあります。*1立法技術上重複規定による煩雑さを避け,簡潔化を期するために常用されます。
これに対して,適用は,ある事項・事件に関する法令又は規定を本質において違いのない事項・事件に対して,そのまま適用することをいう。
例) 仮登記担保等に関する法律
第17条(破産等の場合の担保仮登記)①破産財団に属する不動産に設定した担保仮登記権利については,「債務者再生及び破産に関する法律」中抵当権に関する規定を適用する。
②「債務者再生及び破産に関する法律」第414条は,破産財団に属しない破産者の不動産について設定されている担保仮登記権利者にこれを準用する。
意見1)
「準用」と「適用」について,少し追加したいです。
上記準用と適用の意味のように,「準用」は,性質に反しない限度で,その趣旨を受け入れるという趣旨であるから,例えば,A法の規定内容がB法の規定内容と同一であれば,「適用」を使用すべきであると考えます。
そして,「仮登記担保等に関する法律」でのように,当該条文で,他の法律の規定を準用することもありますが,他法令を準用しようとする場合には,当該条文で直接「準用する」とせず,「他法令の準用」という一般的な別途の条項を置く方式で処理する例もあります。
例) 行政訴訟法
第8条(法適用例)①行政訴訟については,他の法律に特別の規定のある場合を除いては,この法律の定めるところによる。
②行政訴訟に関して,この法律に特別の規定のない事項については,裁判所組織法並びに民事訴訟法及び民事執行法の規定を準用する。<改正 2002.1.26>
意見2)
準用について,若干追加したいです。
準用の場合,2つの法規定の構成要件と効果が一部一致する場合,重複的規定を避けるために使用されるというべきでしょう。
例えば,交換契約の場合には,売買契約の規定が準用されるが,この場合,交換の当事者は,権利の瑕疵と物の瑕疵,所有権の譲渡と取得に対して,売渡人及び買受人と同一の責任を負うが,売買価格についての構成要件に対する点では,交換の当事者は,売渡人及び買受人と同一の責任を負いません。
このように,準用は,2つの法規定の構成要件と効果が一部一致する場合に使用され,その本質的内容が異なったり,同一である場合には,使用されないものと考えられます。
意見3)
準用は,立法技術上,重複規定による煩雑さを避け,簡潔化を期するため,常用されることが原則ですが,
可及的 準用は,使用しない方がと思います。(個人的に)
準用される内容が多少多いといっても,その内容をそのまま当該条文で解き書けば,別途準用される規定を探さなくとも,容易に内容を知ることができるかも知れません。
米国法でも,わが国の場合のように,準用を使用していますが,その例は,多くないようです。
意見4)
米国の立法例のように,準用条文をおかず,類似した事項に対して反復して同様の規定をおくのも問題があると考えます。
従って,準用する条文の数が少なく,準用される条文が分かりやすい場合であれば,準用条文を使用することも望ましいと考えます。
意見5)
一般国民が法令を難しいと言う理由のうちの1つが,まさにわが国の法令に準用規定や縮約語が著しく多いということです。
ところで,準用は,立法技術上便利でもありますが,2制度が同一のメカニズムで連動している場合には,積極的な必要性もあると考えます。
従って,準用規定をおくか否かは,一般国民の理解の便宜と立法技術的必要をともに考慮し,適切に決定すべきであると考えます。
意見6)
準用する場合,立法技術上必要な場合もあるが,理解しやすいように規定することが必要であると考えられます。
日本の場合にも,わが国のような難点を持っているようで,これを改善する方案の1つとして,準用する条文の見出しを表示する法案を採っているようです。
もちろん,特定の法律の全体を準用する場合には不可能でしょうが,特定条文を準用する場合には,可能であろうと思います。
日本の事例を例として挙げるならば,商品取引所法第18条で商法を準用しつつ,「商法第193条,第194条ないし第196条(発起人の責任)の規定は,取引所の発起人について,同法第428条(設立の無効の訴え)の規定は,取引所設置に関して準用する」*2のように規定した事例があります。
参考になるかも知れません。