日韓の 法令に 関すること(など)

日韓の 改め文に 関することを 中心に 調べたことなど(法令以外に 関するものも 含む。)を 書いていく 予定です(ひとまず)。 IE未対応です。

韓国の 改正規定の 改め文について

韓国 国会法制室(日本の 議院法制局に 相当)の 『法制理論と実務』(2019年7月版)の 第1編第5章第5節(公布後施行前法律の改正方式)を 訳出する。

なお、以前 訳出した 韓国 法制処(日本の 内閣法制局に 相当)の 『法令立案・審査基準』(2019年12月版)の 第3編第2章(法令の改正方式と廃止方式)にも 該当する 記載が ある。

 

韓国の場合、改め文自体を改正するのではなく、当該一部改正法令による改正後の被改正法令を改正するイメージである。

わが国の法制執務で一番近いのは、なお効だろうか。要するに、先行するA法の一部を改正する法律(B法)が公布された時点で既にA法が分岐しており、同一の改正内容をB法の施行時点に及ぼすためには、A法とともに、B法により分岐したA法についても改正を行う必要があるといった感じである。

法律を制定・改正するときには、執行基準の整備のため、下位法令を整備しなければならなかったり、法律執行に必要な組織・人材を備えなければならない等、法律の施行のための猶予期間をおかなければならない場合が少なくない。「公布後施行前法律」というのは、このように法律の制定・改正時その施行のための猶予期間をおくことにより、法律が公布はされたが施行日が到来していない状態の法律をいう。

原則的に、公布後施行前法律の条文は、法的安定性の側面でその施行前に改正しないことが望ましいが、急変する社会環境に適時的対応を要求する立法需要が増加するに伴い、公布された法律が施行されるよりも前に更に改正しなければならない状況が発生している。

ところで、改正法律が公布されると、公布日に現行法律に吸収されるのではなく、施行日までは改正された条文の形態で存続するため、その吸収されていない条文を再改正する場合、特に、改正と再改正が順次的に施行されない場合、溶込改正の過程で深刻な誤りが発生することがあるから、相当の注意を行う必要がある。

1.基本改正方式

イ.公布後施行前法律の判断基準

法律を改正しようとするとき、「公布後施行前条文」があるかは法律案の発議日又は提出日を基準として判断する*1。法律案は、発議や提出を通じて議案として確定され、国会の審査手続を経るのであるから、発議日以後に施行される法律条文を改正しようとするときは、改正後施行前法律の改正方式を使用することにより、施行前条文を改正しようとする意図を明確に表し、その意図通りに審査されうるようにする。

ロ.公布後施行前法律の改正文の作成

1)現行条文と公布後施行前条文をともに改正する場合

改正対象が「現行条文」と「公布後施行前条文」を全て含む場合には、冒頭改正文は、通常の改正方式によるが、当該「公布後施行前条文」ごとに公布番号及び題名(○○法一部改正法律)を各々記入し、その条文が施行前条文であることを表示する。改正文の作成順序は、通常の改正文作成と同じく、「公布後施行前条文」と「現在施行中である条文」を区別せず、改正される条文の順序によって作成する。

[例示]「現行条文」と「公布後施行前条文」をともに改正する場合

○○法(律)一部改正法律案

○○法(律)の一部を次のように改正する。

第1条中「◇◇」を「◆◆」にする。

法律第○○○○号○○法(律)一部改正法律第2条中「○○」を「●●」にする。

第4条中「◎◎」を「◉◉」にする。

法律第○○○○号○○法(律)一部改正法律第7条中「▽▽」を「▼▼」にする。

新旧条文対比表を作成するときにも、条文の順序どおりに作成するが、公布後施行前条文ごとに条文の上に当該公布番号及び題名を別途記入する。

現行 改正案

第1条(--)-----◇◇--------。

第1条(--)-----◆◆--------。

法律第○○○○号○○法(律)一部改正法律

法律第○○○○号○○法(律)一部改正法律

第2条(--)-----○○---------。

第2条(--)-----●●---------。

第4条(--)-----◎◎--------。

第4条(--)-----◉◉--------。

法律第○○○○号○○法(律)一部改正法律

法律第○○○○号○○法(律)一部改正法律

第7条(--)-----▽▽--------。

第7条(--)-----▼▼--------。

※ 訳註

このような場合、わが国であれば、次のようになろう。

 

○○法等の一部を改正する法律

(○○法の一部改正)

第1条 ○○法(令和○年法律第○○号)の一部を次のように改正する。

第1条中「◇◇」を「◆◆」に改める。

第4条中「◎◎」を「◉◉」に改める。

(○○法の一部を改正する法律の一部改正)

第2条 ○○法の一部を改正する法律(令和○年法律第○○号)の一部を次のように改正する。

第○条の改正規定の前に次のように加える。

第2条中「○○」を「●●」に改める。

第×条の改正規定の次に次のように加える。

第7条中「▽▽」を「▼▼」に改める。

 

○○法等の一部を改正する法律案新旧対照条文

(傍線部分は改正部分)

○ ○○法(令和○年法律第○○号)(第1条関係)

改正案 現行

第1条(--)-----◆◆--------。

第1条(--)-----◇◇--------。

第4条(--)-----◉◉--------。

第4条(--)-----◎◎--------。

(傍線部分は改正部分)

○ ○○法の一部を改正する法律(令和○年法律第○○号)(第2条関係)

改正案 現行

第2条中「○○」を「●●」に改める。

(新設)

第7条中「▽▽」を「▼▼」に改める。

(新設)

2)公布後施行前条文のみを改正する場合

「公布後施行前条文」のみを改正する場合には、冒頭改正文に改正対象となる法律の公布番号及び題名(○○法一部改正法律)を1度だけ記入し、公布後施行前法律を改正するものであることを表示し、残りは、通常の改正方式による。まだ施行前である全部改正法律や制定法*2を改正しようとする場合にも、施行前条文のみを含んでいるから、同一の方式を取る。

[例示]「公布後施行前条文」のみを改正する場合

○○法(律)一部改正法律案

法律第○○○○号○○法(律)一部改正法律の一部を次のように改正する。

第2条中「○○」を「●●」にする。

第4条中「◎◎」を「◉◉」にする。

※ 冒頭改正文に公布番号及び題名を表示

新旧条文対比表を作成するときにも、冒頭に当該公布番号及び題名を1度だけ記入する。

現行 改正案

法律第○○○○号○○法(律)一部改正法律

法律第○○○○号○○法(律)一部改正法律

第2条(--)-----○○----------。

第2条(--)-----●●---------。

第4条(--)-----◎◎---------。

第4条(--)-----◉◉--------。

ハ.公布後施行前法律改正時の施行日

公布後施行前条文を改正するときには、法的安定性のため、その改正法律の施行日は公布後施行前条文の施行日と一致させたり、それ以降に施行されるようにする。公布後施行前条文を改正しつつ、その施行日より先に施行する場合、混乱を惹起するのみならず、公布順序と施行順序が前後し、溶込改正の過程で深刻な誤りが発生することがあるためである。

ただし、改正の緊急性等を理由として、「公布後施行前法律」の施行日より先に施行しなければならないのであれば、同一の改正内容を「現行条文」及び「公布後施行前条文」を全て改正する改正方式を採るが、附則で施行日を別にし、「現行条文」の改正は先に施行し、「公布後施行前条文」の改正は「公布後施行前法律」の施行日と合わせるようにする。

[立法例]「公布後施行前条文」を改正し、その施行日より先に施行しようとした場合〔訳註:実際の事例を簡略化したものである。〕

(事例の概要)

薬事法」第42条(医薬品等の輸入許可等)に第6項及び第7項を新設し、一定の医薬品を輸入する場合には、海外製造所の名称等を登録・変更登録することとした「薬事法一部改正法律(法律第15891号)」が2019年12月12日施行予定である状況において、同条第1項による医薬品輸入業等の届出が受理を要する届出あることを明確にするため、同条に第6項を追加新設し、2019年12月12日以前から施行しようとした場合

 

現行 改正案

第42条(医薬品等の輸入許可等)①~⑤ (省 略)

第42条(医薬品等の輸入許可等)①~⑤ (現行と同じ。)

〈新 設〉

※ 一定の医薬品を輸入する場合、海外製造所の名称等を登録

〈新 設〉

※ 第6項による登録事項を変更する場合、変更登録

 (省 略)

 (省 略)

 

(改正方式)現行の薬事法第42条に第6項を新設し、公布の日から施行する一方、施行予定の「法律第15891号薬事法一部改正法律」も同時に改正して第6項を新設し、法律第15891号薬事法一部改正法律の施行日(2019年12月12日)に施行することにより、2019年12月12日に第6項(受理を要する届出)が新設された法律第15891号薬事法一部改正法律第42条が現行第42条を代替し、吸収されるようにした。

 

薬事法一部改正法律案

薬事法の一部を次のように改正する。

第42条第6項を第7項にし、同条に第6項を次のように新設する。

⑥ 食品医薬品安全処長は、第1項による届出を受けた場合には、その内容を検討し、この法律に適合するときは届出を受理しなければならない。

法律第15891号薬事法一部改正法律第42条第6項から第8項までを各々第7項から第9項までにし、同条に第6項を次のように新設する。

⑥ 食品医薬品安全処長は、第1項による届出を受けた場合には、その内容を検討し、この法律に適合するときは届出を受理しなければならない。

附  則

この法律は、公布の日から施行する。ただし、法律第15891号薬事法一部改正法律第42条第6項から第9項までは、2019年12月12日から施行する。

 

現行 改正案

第42条(医薬品等の輸入許可等)①~⑤ (省 略)

第42条(医薬品等の輸入許可等)①~⑤ (現行と同じ。)

〈新 設〉

⑥ 食品医薬品安全処長は、第1項による届出を受けた場合には、その内容を検討し、この法律に適合するときは届出を受理しなければならない。

 (省 略)

 (現行第6項と同じ。)

法律第15891号薬事法一部改正法律

法律第15891号薬事法一部改正法律

第42条(医薬品等の輸入許可等)①~⑤ (省 略)

第42条(医薬品等の輸入許可等)①~⑤ (現行と同じ。)

〈新 設〉

⑥ 食品医薬品安全処長は、第1項による届出を受けた場合には、その内容を検討し、この法律に適合するときは届出を受理しなければならない。

 (省 略)

 (現行第6項から第8項までと同じ。)

 

※ 訳註

改正前の法律第15891号薬事法一部改正法律は、次のとおりである。

第42条第6項を第8項にし、同条に第6項及び第7項を各々次のように新設して、同条第8項(従前の第6項)中「管理等に」を「管理並びに・・・登録・変更登録・変更届の手続・方法等に関して」にする。

⑥・ ⑦ (略)

※ 訳註

このような場合、わが国であれば、次のようになろう。

 

薬事法等の一部を改正する法律

薬事法(令和○年法律第○○号)の一部を次のように改正する。

第42条第6項を同条第7項とし、同条第5項の次に次の1条を加える。

6 食品医薬品安全処長は、第1項による届出を受けた場合には、その内容を検討し、この法律に適合するときは届出を受理しなければならない。

附 則

(施行期日)

第1条 この法律は、公布の日から施行する。

薬事法の一部を改正する法律の一部改正)

第2条 薬事法の一部を改正する法律(令和○年法律第○○号)の一部を次のように改正する。

第42条の改正規定中「第42条第6項」を「第42条第7項」に、「同条第8項」を「同条第9項」に、「同条第5項」を「同条第6項」に改め、同条第7項を同条第8項とし、同条第6項を同条第7項とする。

 

○○法等の一部を改正する法律案新旧対照条文

(傍線部分は改正部分)

○ 薬事法(令和○年法律第○○号)(本則関係)

改正案 現行

第42条(医薬品等の輸入許可等)(略)

第42条(医薬品等の輸入許可等)(略)

2~5 (略)

2~5 (略)

 食品医薬品安全処長は、第1項による届出を受けた場合には、その内容を検討し、この法律に適合するときは届出を受理しなければならない。

(新設)

 (略)

 (略)

(傍線部分は改正部分)

○ 薬事法の一部を改正する法律(令和○年法律第○○号)(附則第2条関係)

改正案 現行

第42条第7項中「管理等に」を「管理並びに・・・登録・変更登録・変更届の手続・方法等に関して」に改め、同項を同条第9項とし、同条第6項の次に次の2項を加える。

第42条第6項中「管理等に」を「管理並びに・・・登録・変更登録・変更届の手続・方法等に関して」に改め、同項を同条第8項とし、同条第5項の次に次の2項を加える。

 (略)

 (略)

2.法制上の留意事項

イ.条単位作成の原則の例外

法律案の改正文は条単位で作成することが原則であるが、公布後施行前法律の改正方式は例外的な立案方式として次のような特殊性がある。

まず、条単位作成の原則にもかかわらず、同条中現行の項・号・目〔訳註:号の細分のイロハに当たるものをこのように呼ぶ。〕と公布後施行前の項・号・目をともに改正する場合、現行の項・号・目と、公布後施行前の項・号・目に各々分けて改正文を作成する。ただし、改正される項・号・目中に公布後施行前の項・号・目の施行日よりも先に施行される条文がなく、改正される条文に複数の現行の項・号・目と公布後施行前の項・号・目が含まれており、改正文を分離して作成することが困難な場合には、公布番号及び題名を記入して例外的に条単位で作成することができる。

[例示]同一の条内で「現行条文」と「公布後施行前条文」を一緒に改正する場合

第①条第1項中「◇◇」を「◆◆」にする。

法律第○○○○号○○法(律)一部改正法律第1条第2項中「○○」を「●●」にする。(○)

※ 法律第○○○○号○○法(律)一部改正法律第1条第1項中「◇◇」を「◆◆」にし、同条第2項中「○○」を「●●」にする。(×)(例外的許容)

※ 第1条第1項中「◇◇」を「◆◆」にし、法律第○○○○号○○法(律)一部改正法律第1条第2項中「○○」を「●●」にする。(×

しかし、新旧条文対比表を作成するときには、「条」の中間である「項」の前に公布番号及び題名を記入せず、「条」の上に1度だけ記入する。

現行 改正案

法律第○○○○号○○法(律)一部改正法律

法律第○○○○号○○法(律)一部改正法律

第1条(--)① -----◇◇---------。

② -----○○---------。

第1条(--)① -----◆◆--------。

② -----●●--------。

また、公布後施行前部分(「○○」)が含まれた条であっても「○○」部分以外の項・号・目のみを改正するときや、又は公布後施行前部分(「○○」)のある項・号・目であっても「○○」が含まれない部分のみを改正しようとするときには、公布番号を使用せず、通常の現行法律の改正方式によるようにする。

ロ.法律の主たる施行日は到来したが、一部条・項の施行日が到来していない場合*3

附則で主たる施行日と別に改正対象条項の施行日が繰り延べられている場合には、法律の主たる施行日は到来しているが、改正対象の条項の施行日が到来していないことがある。このとき、改正対象条項が属する制定・改正法律の主たる施行日が到来している場合であっても、当該条文が施行前条文であることを分かって審査することができるように「公布後施行前法律」の改正方式により改正対象の施行前条文に公布番号及び題名を記入するようにする。

ハ.改正する法律の施行日が「公布後施行前条文」の施行日より更に遅れる場合

3個月以内に施行される予定である「公布後施行前条文」を改正するとともに、その施行日を公布後6個月が経過した日から施行する。」と規定する場合のように、改正する法律の施行日が「公布後施行前条文」の施行日よりも更に遅れることが明らかである場合にも「公布後施行前条文」の形式で改正するようにする。すなわち、法律案の発議日又は提出日に改正対象条文が施行前であれば、公布後施行前法律の改正方式で作成し、法律審査時に考慮できるようにする。法律案の施行日は、審査過程でいくらでも修正でき、その施行日が公布後施行前条文の施行日より前倒しとなる修正を行う場合には、それに合わせて適切な改正方式を採らなければならないためである。

ニ.他の法律(B法)の公布後施行前条文を引用しようとする場合

A法を改正するとともに他の法律(B法)の公布後施行前条文を他の法律の施行前に引用しようとする場合、他の法律の現行条文を引用しなければならないのか、或いは施行予定である条文を引用しなければならないのかが問題となる。他の法律の現行条文を引用しようとする場合、再度改正しなければならない煩わしさが生じ、他の法律の施行予定である条文どおりに引用する場合、その間の法的混乱や空白が生じるためである。

この場合は、公布後施行前法律をどのように改正するかという「公布後施行前法律の改正方式」の対象ではないが、公布後施行前条文により惹起される法律間の改正の不一致を解消するという点で、ともに検討する必要がある。

例えば、他法(B法)第3条が第4条に条番号が変更され、その施行日は2020年1月1日である「B法一部改正法律」が公布された状況において、A法を改正するとともに既存のB法第3条の内容を準用して「B法一部改正法律」の施行日よりも先である2019年7月1日に施行しようとする場合を想定することができる。

このとき、先だって言及したように「B法第3条」で準用するように改正した場合には改めて2020年1月1日から「B法第4条」を準用するように再改正しなければならないという問題が生じ、最初から「B法第4条」を準用するようにした場合には一定期間の間(2019年7月1日~2019年12月31日)法的混乱が生じる問題が発生する。これを解消する法案としては、次のような2種類の改正方式を考量することができる。

① 現行「B法第3条」を準用するようA法を改正するとともに、A法附則(他の法律の改正)で公布後施行前である「B法一部改正法律」附則の「他の法律の改正」を通じてA法の引用条文「B法第3条」を「B法第4条」に改正する方式(第1案)

[例示]A法・B法附則の「他の法律の改正」を通じて改正する方式(第1案)

 

A法一部改正法律案

A法の一部を次のように改正する。

第5条に第4項を次のように新設する。
④ ……に関しては、「B法」第3条を準用する。

附  則

第1条(施行日)この法律は、2019年7月1日から施行する。ただし、附則第2条の改正規定は、2020年1月1日から施行する。

第2条(他の法律の改正)法律第○○○号B法一部改正法律の一部を次のように改正する。

附則第△条を次のように新設する。

第△条(他の法律の改正)A法の一部を次のように改正する。

第5条第4項中「「B法」第3条」を「「B法」第4条」にする。

② A法改正時最初から「B法第4条」を準用するようにして、「A法一部改正法律」附則に「B法一部改正法律」の施行(2019年12月31日)まで「B法第4条」を「B法第3条」とみなすよう経過措置をおくことにより改正する方式(第2案)

[例示]A法附則の「経過措置」を通じて改正する方式(第2案)

 

A法一部改正法律案

A法の一部を次のように改正する。

第5条に第4項を次のように新設する。
④ ……に関しては、「B法」第4条を準用する。

附  則

第1条(施行日)この法律は、2019年7月1日から施行する。

第2条(「B法」第4条に関する経過措置)第5条第4項の改正規定中「「B法」第4条」は、2019年12月31日までは、「「B法」第3条」とみなす。

第1案は、論理的整合性が優れ、どの時点でもA法本則で現在適用されている他法律の引用条文を確認することができるという長所があるが、複雑であるという短所がある。第2案は、一見理解しやすい頂点があるが、受範者が附則まで把握することが難しい状況で、施行日までの間隔が長い場合、相当の時間法律の本則の文言と実際に適用の適用条文が相違することにより、混乱を惹起する可能性があるという短所がある。このような長短所と、施行時期等を考慮して、第1案と第2案のうち、適切な改正方式を採る必要がある。

[立法例]第2案により附則を作成した場合

 

司法警察官吏の職務を遂行する者とその職務範囲に関する法律一部改正法律案

附  則 <法律第11161号, 2012. 1. 17.>

第4条(「農水産物品質管理法」の施行に伴う経過措置)第5条第28号ロ目及び第6条第25号ロ目の改正規定中「「農水産物品質管理法」」は、2012年7月21日までは、「「農産物品質管理法」及び「水産物品質管理法」」とみなす。

ホ.附則(他の法律の改正)により改正される条文をその附則の施行日よりも先に改正しようとする場合

制定・改正されるB法附則(他の法律の改正)において、その法律を引用している他の法律(A)の条項を改正することができるが、B法附則が施行されるよりも前にA法の当該条項が変動する等、A法の改正が先になされた場合B法附則(他の法律の改正)が正常に施行されない問題点が発生しうる*4

例えば、B法の第3条が第4条に条番号が変更され、それに伴いB法附則(他の法律の改正)でB法を準用しているA法第45条第2項中「B法第3条第2項」を「B法第4条第2項」に変更する「B法一部改正法律」が公布され、2020年1月1日に施行が予定されている状況で、A法第45条第2項を新設し、「第45条第2項」が「第45条第3項」に項番号が変更され、その施行日が「B法一部改正法律より先の2019年7月1日に施行する場合を想定することができる。

この場合、A法「第45王第2項」が「第45条第3項」に変更される「A法一部改正法律」が2019年7月1日に先に施行されることに伴い、B法の附則(他の法律の改正)を通じて従前のA法第45条第2項中「B法第3条第2項」を「B法第4条第2項」に改正しようとする意図が、正確に施行されないという問題が発生する。これを解消する方案としては、次のような改正方式を考慮することができる。

[例示]附則(他の法律の改正)で改正される条文をその附則の施行日より先に改正し、施行しようとする場合

 

(事例の概要)B法第3条を第4条に変更し、B法附則(他の法律の改正)でA法第45条第2項中「B法第3条第2項」を「B法第4条第2項」に改正するB法一部改正法律(公布番号第○○○○号)」が公布され、2020年1月1日に施行が予定されている状況で、A法第45条に第2項を新設し、「第45条第2項」が「第45条第3項」に項番号が変更されて、施行日が「B法一部改正法律」の施行日よりも先である2019年7月1日に施行する場合

B法一部改正法律案

B法の一部を次のように改正する。

第3条を第4条にし、第3条を次のように新設する。

附  則

第1条(施行日)この法律は、2020年1月1日から施行する。

第2条(他の法律の改正)A法の一部を次のように改正する。

第45条第2項中「B法第3条第2項」を「B法第4条第2項」にする。


(改正方式)A法一部改正法律の附則(他の法律の改正)で施行前条文である「B法一部改正法律の附則(他の法律の改正)」を改正することで、元来の改正趣旨を達成することができる。

A法一部改正法律案

A法の一部を次のように改正する。

第45条第2項を第3項にし、同条に第2項を次のように新設する。

附  則

第1条(施行日)この法律は、2019年7月1日から施行する。

第2条(他の法律の改正)法律第○○○号B法一部改正法律の一部を次のように改正する。

附則第2条中「第45条第2項」を「第45条第3項」にする*5

※ 訳註

このような場合、わが国であれば、次のようになろう。

 

B法の一部を改正する法律

B法(令和○年法律第○○号)の一部を次のように改正する。

第3条を第4条とし、第2条の次に次の1条を加える。

附 則

(施行期日)

第1条 この法律は、2020年1月1日から施行する。

(A法の一部改正)

第2条 A法(令和○年法律第○○号)の一部を次のように改正する。

第45条第2項中「B法第3条第2項」を「B法第4条第2項」に改める。

 

A法の一部を改正する法律

A法(令和○年法律第○○号)の一部を次のように改正する。

第45条第2項を同条第3項とし、同条第1項の次に次の1項を加える。

附 則

(施行期日)

第1条 この法律は、2019年7月1日から施行する。

(B法の一部を改正する法律の一部改正)

第2条 B法の一部を改正する法律(令和○年法律第○○号)の一部を次のように改正する。

附則第2条のうちA法第45条第2項の改正規定中「B法第3条第2項」を「B法第4条第2項」に改める。

 

*1:委員会で発議又は提出された法律案を審査し、最終的な法律案を作成する場合には、公布後施行前法律の判断基準時点を本会議の審査報告日や対案の提案日とする。

*2:まだ施行前である制定法の改正の場合、現行法が存在せず、公布番号を特定する必要がないという意見もあるが、現行法が存在しない場合といっても、まだ施行日が到来していない施行前法律を改正するという旨が分かるように「公布後施行前法律」の改正方式により、公布番号を記入して特定するようにする。施行前の制定法の改正する場合も同様である。

*3:法制処の「法令立案・審査基準」によれば、法律の主たる施行日は到来したが、一部「条」や「項」の施行日のみが未だ到来していない場合には、その法律全体が現行法であるとして「公布後施行前法律」の概念から除外しており、ただし附則で施行日を定めるとき到来していない施行日と同一に合わせて規定するものとしている。

*4:この場合において、B法附則(他の法律の改正)がまだ施行されておらず生じる、A法の公布後施行前条文(B法を引用している部分)を前に言及した「公布後施行前法律の改正の方式」により改正する方案を考慮することができるが、当該条文は「A法一部改正法律」ではないから、同じ方式を適用することができないという問題点がある。

例えば、「法律第15534号感染病の予防及び管理に関する法律一部改正法律」の附則を通じて薬事法の一部条文(第23条)の改正が施行される予定である場合「法律第15534号感染病の予防及び管理に関する法律一部改正法律附則(他の法律の改正)」の公布後施行前条文があるのであって、「法律第15534号薬事法一部改正法律第23条」という公布後施行前条文が存在するのではない。国会又は法制処で提供する「インターネット法律情報」上では、他の法律の附則(他の法律の改正)により生じる施行前条文の場合にも、公布番号を通じて、施行前法律として法律情報を提供しているが、これはどこまでも当該条文の改正沿革を提供するための手段であるに過ぎない。

*5:「A法一部改正法律」の施行により、「B法一部改正法律」附則第2条が変更される(第45条第2項中「B法第3条第2項」を「B法第4条第2項」にする。→第45条第3項中「B法第3条第2項」を「B法第4条第2項」にする。)。