日韓の 法令に 関すること(など)

日韓の 改め文に 関することを 中心に 調べたことなど(法令以外に 関するものも 含む。)を 書いていく 予定です(ひとまず)。 IE未対応です。

韓国の改め文について/全7件(4.公布後施行前条文の改正文作成方式)

韓国法制処*1 『法令立案・審査基準』(2022年12月版)第3編第2章(法令の改正方式と廃止方式)より、「4.公布後施行前条文の改正文作成方式」を 訳出する。

4.公布後施行前条文の改正文作成方式

イ.公布後施行前条文の改正の意義

法令の改正は、現在施行中の「現行法令」の条文を対象とすることが原則であるが、政策が途中で変更されたり、関係法令や条文の改正に伴う附随的改正が必要な場合等の事由により、「公布後施行前条文」(法令が公布され改正が確定されたが、未だ施行日が到来していない法令の改正条文をいう。)を改正すべき場合発生することがある。わが国は、改正法令の内容が既存法令の内容に吸収される吸収改正方式を取っており、改正法令が既存法令に吸収される時点を「施行日」とみなしているから、公布後施行前条文は、既存法令に吸収されず、「一部改正法令」形式で独立して存在することとなる。したがって、現在施行中の規定に対する改正文とは別に、「公布後施行前条文」に対する改正文を別途に作成しなければならない。

ロ.公布後施行前条文の判断基準

法令を改正する場合、公布後施行前条文があるかは、「改正しようとする条文」の「施行日」を基準として判断することとなる。大統領令や部令の場合、改正過程で施行日を予測することができるから、「施行日」を基準として判断することが可能であるが、法律の場合には、国会の立法過程が残っているため、改正過程で施行日を予測することが難しいから、「国会提出日」を基準として公布後施行前であるかを判断するほかない。法令案の主たる施行日を定め、一部条・項の施行日を別に定めた場合において、主たる施行日は到来したが、施行日が到来していない一部条・項を改正すべき場合*2にも、公布後施行前法令の改正方式によるものとする。

また、改正しようとする法令「条文」の部分と同一の部分に対して、公布後施行前条文の改正規定があるかも確認しなければならない。改正しようとする条文と公布後施行前条文が同一の部分でないか、公布後施行前条文の体系に影響を与えない等矛盾が発生しない場合であれば、公布後施行前条文を改正する必要がない。例えば、第2条第1項本分中一部を改正しようとする場合において、第2条第1項ただし書を改正する公布後施行前条文があるとすると、第2条第1項本文の改正は、公布後施行前条文の改正ではなく、現行条文を基準として改正すればよい。

ハ.公布後施行前条文改正時の一般的な作成方法

1)公布後施行前条文のみを改正する場合

法令案の最初に書く改正指示文に一部改正法律の公布番号を記載し、条文の改正文は、一般的な一部改正の形式により表現する。

法律第○号○○○法一部改正法律の一部を次のように改正する。

第○○条中「○○○」を「▲▲▲」にする。

全部改正法律を公布後施行前に再度改正する場合にも、施行前法律を改正するという趣旨が明確に明らかになるよう全部改正法律の公布番号を記載する。

法律第○号○○○法全部改正法律の一部を次のように改正する。

第○○条を次のようにする。

第○○条(---)---------------。

2)現行条文と公布後施行前条文をともに改正する場合

改正法令において、現行条文と公布後施行前条文をともに改正する場合には、改正指示文は、一般的な形式により作成し、公布後施行前条文を改正する改正文にその条文ごとに公布後施行前法令の公布番号と題名を記載する。改正文作成の順序は、現行条文と公布後施行前条文を別途区分せず、条文の順序どおりに改正文を作成し、公布後施行前条文が連続している場合には、公布後施行前法令の公布番号を一括して付することができる。

そして、公布後施行前法令(未だ吸収されていない一部改正法令形式)の内容を再び改正するという点が表されるよう「~の改正規定」という表現を使用する。公布後施行前条文は、法令が公布されたとしても、施行日前には、吸収されずに「一部改正法令」の形式で存在しているため、一部改正法令の改正文自体を再び改正することが論理的であるとも考えられる。しかし、一部改正法令の施行日前であっても、国家法令情報センター等を通じて施行予定の法令(一部改正法令の改正文が反映された条文の形態)を容易に確認することができ、現行法令の条文を改正する通常的な改正文方式の方が、より作成・理解が容易であるという点を考慮し、「改正規定」は「改正された規定」を意味するものとみなし、改正文が反映された条文を前提として改正文を作成する。

○○○法(律)の一部を次のように改正する。

第2条中「○○」を「▲▲」にする。

法律第○号○○○法一部改正法律第3条の改正規定中「◇◇」を「■■」にする。

第10条中「◎◎」を「●●」にする。

法律第○号○○○法一部改正法律第12条の改正規定を次のようにする。

[立法例]

大統領令第29682号

残留性有機汚染物質管理法施行令一部改正令

残留性有機汚染物質管理法施行令の一部を次のように改正する。

(中略)

別表1第12号中「フラン」を「フューラン」にし、同表第13号中「クロルデカン」を「クロルデコン」にして、同表第14号中「リンダン」を「リンデン」にし、同表第26号を次のようにする。

26.ポリクロリネイテッドナフタレン(Polychlorinated naphthalenes, PCNs)

大統領令第27965号残留性有機汚染物質管理法施行令一部改正令別表1第28号の改正規定を第30号とし、同表の改正規定に第28号及び第29号を各々次のように新設する。

28.デカブロモジフェニルエーテル(Decabromodiphenyl ether, BDE-209)

29.短鎖塩化パラフィン(Short-chain chlorinated paraffins, SCCPs)

ただし、例外的に「~の改正規定」の表現の代わりに「~の改正部分」という表現を使用すべき場合がある。「改正部分」は、「a」を「b」にするという改正文全体を意味し、改正文全体を改正するしかない場合にのみ使用する。

[立法例]

大統領令第28224号

医療機器法施行令一部改正令

(2017年8月1日公布)

大統領令第29786号

医療機器法施行令一部改正令

(2019年5月21日公布)

別表2第2号ニ目をト目にし、同号ニ目からヘ目までを各々次のように新設する。

(表省略)

※ 医療機器等級別2019年7月1日~2023年7月1日施行

別表2第2号ニ目をホ目にし、同号にニ目を次のように新設して、同号ホ目(従前のニ目)の根拠法条文欄中「法第56条第1項第3号」を「法第56条第1項第4号」にする。

※ 2019年6月12日施行

(表省略)

大統領令第28224号医療機器法施行令一部改正令別表2の改正部分中「第2号ニ目をト目にし、同号」を「第2号ニ目及びホ目を各々ト目及びチ目にし、同号に」にする。

※ 2019年6月12日施行

改正しようとする条に現在施行中の内容と施行予定である内容がともにある場合には、改正対象(項・目)別に各々改正文を作成することが原則である。ただし、分離して改正文を作成することが難しい場合には、「条」や「項」全体を公布後施行前条文の改正方式により全部改正することがある*3

ニ.施行日による公布後施行前条文の改正方式

1)改正条文の施行日が公布後施行前条文の施行日と同じ場合

一般的に改正内容を公布後施行前条文よりも先に施行すべき政策的理由がない場合であれば、公布後施行前条文を改正する条文の施行日は、公布後施行前条文の施行日と一致させるようにする。これは、公布後施行前法令の改正規定の施行日を当初の公布後施行前条文の施行日に合わせて規定しなかった場合、公布後施行前法令を改正する内容が公布後施行前法令よりも先に施行されることとなる論理矛盾的結果が発生し、公布順序と施行順序が前後する等吸収される過程においても混乱が発生する可能性があるためである。

[立法例]

大統領令第27549号

雇用保険法施行令一部改正令

(2016年10月18日公布、2017年1月1日施行)

大統領令第27738号

雇用保険法施行令一部改正令

(2016年12月30日公布、2017年1月1日施行)

第145条第2項第4号・第5号・第5号の2及び第6号を各々第9号から第12号までにし、同項第1号から第3号までを各々第3号から第5号までにして、同項に第1号・第2号大火第6号から第8号までを次のように新設する。

1. 法第15条による被保険資格に関する届出の受理等

2.法第16条第1項による離職確認書の受理

6.・7. (省略)

8.第4条による代理人の選任・解任の届出の受理(代理人が法第15条及び第16条に関する事項を代理する場合に限る。)

大統領令第27549号雇用保険法施行令一部改正令第145条第2項の改正規定に第8号の2を次のように新設する。

8の2.第35条第7号による仕事・家庭両立支援事業のための貸付金の管理・運用に関する事項

この場合、公布後施行前条文の改正に伴い附則を置く必要が生じる可能性があるが、附則は、吸収改正方式ではなく増補改正方式によるから、従前規定がどのような法令を意味するのか特定されるように明確に規定する必要がある。

[立法例]施行予定の全部改正令の一部条文を改正するとともに附則を置いた事例

大統領令第30800号

海洋警察庁所属警察公務員の任用に関する規程全部改正令

(2020年6月23日公布)

大統領令第31419号

海洋警察庁所属警察公務員の任用に関する規程一部改正令

(2021年1月26日公布)

海洋警察庁所属警察公務員の任用に関する規程の全部を次のように改正する。

第31条(試験科目)警察公務員の公開競争採用試験の筆記試験の科目は別表4のとおりとし、警察幹部候補生の公開競争選抜試験の筆記試験の科目は別表5のとおりとして、警察公務員経歴競争採用試験等の筆記試験の科目は別表6のとおりとする。ただし、別表4及び別表5の試験科目のうち、次の各号の試験科目は、当該号に定める試験により代えることができる。

1.英語科目:次の各目のいずれか一に該当する試験

イ.海洋警察庁長が指定する国内外の外国語試験専門機関において実施する英語試験

ロ.別表7による英語能力検定試験(刑事以下の採用試験は、除く。)

2.韓国史科目:海洋警察庁長が指定する韓国史試験

※ 2022年1月1日施行:第31条、第34条、別表4~8

大統領令第30800号海洋警察庁所属警察公務員の任用に関する規程全部改正令第31条各号以外の部分ただし書の改正規定中「代えることができる」を「代える」にし、同条各号の改正規定を次のようにする。

1.英語科目:別表7による英語能力検定試験

2.韓国史科目:別表7の2による韓国史能力検定試験

※ 2022年1月1日施行

附 則

第3条(進行中の試験に関する経過措置)この命令の施行前に公告された試験については、大統領令第30800号海洋警察庁所属警察公務員の任用に関する規程全部改正令第31条、別表4から別表7までの改正規定及び別表7の2の改正規定にかかわらず、それに該当する従前の「海洋警察庁所属警察公務員の任用に関する規程」(大統領令第30800号により全部改正される前のものをいう。)第5条及び別表3から別表6までの規定による。

2)改正条文の施行日を公布後施行前条文の施行日よりも早くすべき場合

改正しようとする条文に対する公布後施行前条文がある場合であって、改正条文の施行日を公布後施行前条文の施行日よりも早く施行すべき場合がある。例えば、2022年10月1日施行予定である「a(現行規定)」を「b」に改正する公布後施行前条文があるが、「a」を「c」に改正し、2022年5月1日施行するようにしようとする場合である。このような場合、改正内容に矛盾が発生せず、順次的に改正内容が反映されるよう、現行規定と公布後施行前条文を同時に改正しなければならない。

[立法例]第18条の2及び第18条の3を新設する公布後施行前条文があるが、当該条文の施行前に第18条の2を更に新設する改正が必要な場合

木材の持続可能な利用に関する法律施行令(現行)

大統領令第28691号

木材の持続可能な利用に関する法律施行令一部改正令

(2018年3月6日公布)

大統領令第28919号

新産業等の規制革新のための道路交通法施行令等8個大統領令一部改正令

(2018年5月28日公布)

第18条(木材製品新技術の指定)(省略)

第18条の2及び第18条の3を各々次のように新設する。

第18条の2(輸入申告)(省略)

第18条の3(輸入検査等)(省略)

※ 2018年10月1日施行

第18条の2を次のように新設する。

第18条の2(優先購買)① 法第19条第2項において「大統領令で定める金額」とは、「国を当事者とする契約に関する法律」第4条第1項各号以外の部分本文により企画財政部長官が定め告示する国際入札による政府調達契約の金額中の最低金額をいう。

② 法第19条第2項において「大統領令で定める一定比率」とは、別表1の2による比率をいう。

※ 2018年5月29日施行

大統領令第28691号木材の持続可能な利用に関する法律施行令一部改正令第18条の2及び第18条の3の改正規定を各々第18条の3及び第18条の4にする。

※ 2018年10月1日施行

[立法例]別表4を全部改正する施行前条文の施行日前に別表4の一部内容を変更しようとする場合

公務員任用試験令(現行)

大統領令第29374号

公務員任用試験令一部改正令

(2018年12月18日公布)

大統領令第31046号

公務員任用試験令一部改正令

(2020年9月22日公布)

[別表4]

(備考中前段)

上記の表で定める試験は、当該5級公務員公開競争採用試験及び外交官候補者選抜試験の最終試験の施行予定日から逆算して4年になる年の1月1日以後に実施された試験で、第1次試験施行予定日前日までに点数(等級)が発表された試験に限り、基準点数が確認された試験のみを認定する。

別表4を別紙のようにする。

(別紙中備考前段)

上記の表で定める試験は、5級公務員公開競争採用試験、7級公務員(7級に相当する外務領事職列、外交情報技術職列の外務公務員を含む。)の公開競争採用試験及び外交官候補者選抜試験の最終試験の施行予定日から逆算して4年になる年の1月1日以後に実施された試験で、第1次試験施行予定日前日までに等級が発表された試験に限り、基準点数が確認された試験のみを認定する。

※ 2021年1月1日施行

別表4備考前段中「最終試験施行予定日」を「第1次試験施行予定日」に、「4年になる年」を「4年以上になる年で人事革新処長が定め告示する年」にする。

※ 2020年9月22日施行

大統領令第29374号公務員任用試験令一部改正令別表4備考前段の改正規定中「最終試験施行予定日」を「第1次試験施行予定日」に、「4年になる年」を「4年以上になる年で人事革新処長が定め告示する年」にする。

※ 2021年1月1日施行

3)改正している法律の施行日が「公布後施行前条文」の施行日よりも更に遅く来ることが明らかな場合

改正条文の施行日が公布後施行前条文の施行日よりも遅く来ることが明らかな場合であるとしても、公布番号を特定して公布後施行前条文の改正であることを明確にしておく必要がある。法律の場合には、改正条文の施行日がいつになるのかは最終的に国会で決定されるから、政府立法の過程中には、公布後施行前条文の施行日より遅く来ることが明らかであると確定することができないため、「国会提出日」を基準として公布後施行前条文であれば、公布後施行前条文の条文改正方式により作成しなければならない。

大統領令や部令の場合にも、改正条文の施行日が公布後施行前条文の施行日より遅く来ることが明らかであったとしても公布後施行前条文の改正方式による必要がある場合がある。公布後施行前条文の施行日以前に公布後施行前条文を改正する改正令が公布される場合であれば、公布の際、公布当時の現行規定を改正するのか、施行する時点の現行規定(公布後施行前条文が反映された現行規定)を改正するのか混乱が生ずるおそれがあるため、公布後施行前条文を改正するものであることが分かるよう公布後施行前条文の改正方式による。

*1:日本の内閣法制局に相当

*2:従前には、法令案の主たる施行日は到来したが、一部条・項の施行日が到来していない場合には、その法令全体を現行として改正するものとしていたが、当該条・項の場合、施行日が到来する前には、現行規定としてみなすことができないから、公布後施行前条文であることを特定する改正方式によるよう変更した。ただし、制定法令の場合、制定法令以外の従前の規定が存在しないから、法令の号数を特定しなくてもよい。

*3:国会も、改正される項・号・目中公布後施行前項・号・目の施行日よりも先に施行される条文がなく、改正される条文に複数の現行項・号・目と公布後施行前項・号・目が含まれているため、改正文を分離して作成することが難しい場合には、公布番号及び題名を記入し、例外的に条単位で作成することができるとしている(国会、『法制理論と実務』、2019年、181頁)。