韓国法制処*1 『法令立案・審査基準』(2022年12月版)第3編第2章(法令の改正方式と廃止方式)より、「1.改正方式の類型と基準」を 訳出する。
1.改正方式の類型と基準
イ.改正方式の基本原則
法令を改正する方式には、その改正対象の範囲により、法令の一部分のみを改正する一部改正方式と、法令の全体を改正する全部改正方式がある。一部改正方式には、改正対象となる既存法令と新たな改正法令の関係において、改正内容が既存法令の内容に吸収される吸収改正方式(既存法令の一部を追加・修正・削除する改正法令が成立・施行されるやいなや、その改正内容が既存法令の内容に吸収される方式)、改正法令が独立的に存在する増補方式(既存法令の一部を追加・修正・削除する改正法令が成立・施行された後も既存法令中に吸収されず、形式上独立的に存在し、既存法令を内容的に修正する方式)に区分されるが、わが国〔訳註:韓国〕は、吸収改正方式を採っている。
ロ.一部改正と全部改正の選択
ある法令を改正するとき、一部改正方式を採るのか、そうでなければ全部改正方式を採るのかという問題は、主に改正する部分の分量、重要度、整備の必要性等により決定されることが普通であり、次のような場合には、特別の事情がなければ全部改正方式を採る。
- 既存条文の3分の2以上を改正する場合。ただし、用語や表現を変更するため、整理の次元で改正すべき事項が増加した場合には、一部改正方式にすることができる。
- 法令の核心的部分を根本的に改正するのに合わせ、相当の部分にわたって、これと関連する事項を整備すべき必要がある場合
- 制定された後長期間が経過し、法文に現れる用語や規制の態度が全体的に見て現実に符合せず、数次の改正を重ねた結果削除された条項や枝番号の付いた章・節・条・号が多く、新たな体制に整備すべき必要がある場合
全部改正する場合には、廃止・制定方式と同様に、特別の規定がなければ、原則的に従前の附則規定は、全て失効するものとみなす*2。
ハ.全部改正と廃止・制定方式の選択
法令を全面的に改変する方法としては、全部改正方式と廃止・制定方式とがある。全部改正方式は当該法令の全部を改正する方式であり、廃止・制定方式は既存法令を代替する新たな法令を制定するとともに当該法令の附則において既存法令を廃止する方式である。概ね、既存法令と新法令の間の制度上の同質性を強調する必要があるときには全部改正方式を採り(例:「建設業法」を全部改正するとともに「建設産業基本法」にしたもの)、制度それ自体が新旧両法令間で全面的に、又は本質的に変更されるときには廃止・制定方式を採る(例:「信用調査業法」を廃止するとともに「信用情報の利用及び保護に関する法律」を制定したもの)。