日韓の 法令に 関すること(など)

日韓の 改め文に 関することを 中心に 調べたことなど(法令以外に 関するものも 含む。)を 書いていく 予定です(ひとまず)。 IE未対応です。

韓国の 修正案について

韓国 国会法制室(日本の 議院法制局に 相当)の『法制理論と実務』(2019年7月版)の 第1編第7章第1節(修正案)を 訳出する。

なお、2021年8月現在改訂等は、なされていない。

委員会の審査や本会議の審議の段階等で、法律案は、元来の内容が変更・削除されたり、一部内容が追加されたりもするが、これを「修正」といい、その修正のため、一定の形式を備え書面で発議するものを「修正案」という。修正案は、原案を前提として成立し、原案と同時に審議される附随的・従属的案件である。修正案は、可決されると原案を変更する効力を有する。

1.修正案の範囲

原案の修正案は、追加・削除・変更等を通じ、原案に異なる意思を加えて、改めるものである。従前は、「国会法」で修正案の範囲について明示的な制限や基準をおいていなかった。憲法裁判所(2006. 2. 23. 2005憲ラ6)も「原案が本来の趣旨を失い、全く異なる意味に変更される程度にまで至らなければ、「国会法」上修正案に該当する」と決定し、修正案の範囲を広く認めてきた。しかし、2010年3月12日施行された「国会法第95条第5項*1は、委員会の審査権限を尊重する次元で、議員が提出する本会議修正案は原則として「原案の趣旨及び内容と直接関連」があることを要求している。

これにより、原案と直接関連性を認めることのできる修正案の範囲について、次のような例を参考することができる。

  1. 原案の改正条文を直接修正(変更、削除等)する場合
  2. 原案の改正条文を施行するための附則のみを修正する場合
  3. 原案の法律題名のみを修正する場合
  4. 原案の改正条文にただし書若しくは後段を新設し、又は当該条文のただし書又は後段を変更・削除する場合
  5. 原案の改正条文と同一の条内で項・号・目〔訳註:日本法でいう、号の細分の「イロハ・・・」のことをいう。〕等を新設・変更・削除する場合
  6. 原案の改正条文に含まれた用語の定義規定、適用範囲、行政制裁、罰則、過料等を新設・変更・削除する場合

このような場合でも、原案と直接関連性が認められる範囲で、原案の基本的な趣旨や内容を変更してはならないだろう。原案と同一の主題であっても、原案の趣旨及び内容と直接関連のない新たな内容を追加し、又は削除して、原案と全く異なる内容が含まれたものは、修正案として成立しえない。この場合、修正案の形式ではなく、新たな案を提出しなければならない。ただし、「国会法」第95条第5項ただし書により、議長が各交渉団体の代表議員と合意をする場合には、修正案の形式で提案することもできる。

2.修正案の種類

修正案は、提出時期により、大きく委員会修正案、全員委員会修正案及び本会議修正案に区分して考えることができる。

イ.委員会修正案

委員会は、回付された法律案の審査を終えたときは、審査経過、結果、その他必要な事項を議長に書面で報告しなければならない(「国会法」第66条第1項)。委員会で審査した結果が修正議決である場合には、その修正内容を反映した修正案を別途提出せず、審査報告書に添付して提出する。委員会で審査報告した修正案は、本会議で賛成なくして議題となる(「国会法」第95条第2項)。

委員会修正案が成立する場合は、① 当該委員会の委員が法律案に対する修正を提案(修正動議の発議)し、他の委員1人以上の賛成で修正動議が議題となり、これを審査・表決した場合(「国会法第71条ただし書)と、② 小委員会で法律案を修正議決した審査結果が委員会の全体会議で議題となり、これを審査・表決した場合(「国会法」第57条第8項、第66条及び第95条)である*2*3

ロ.全員委員会修正案

委員会の審査を経たか、委員会が提案した法律案のうち、政府組織に関する法律案、租税又は国民に負担を課する法律案等については、本会議の最終議事決定前に委員らの充分な発言機会を保障し、より深度のある審査のため必要な場合には、在籍議員の1/4以上の要求で全員委員会を開会し、法律案に対する修正案を提出することができる(「国会法」第63条の2第1項・第2項)*4。この場合、修正案の提出者は全員委員長がなり、修正案に対する提案説明は全員委員長や全員委員長が指定する委員がする。全員委員会の修正案も、他の委員会の修正案と同様に、本会議で別途の賛成なくして議題となる。

ハ.本会議修正案

委員会の審査過程での修正動議は、特別の形式を備えず、動議者ほか1人の賛成のみでも議題となりうることに反して、(「国会法」第71条ただし書)、本会議の審査過程での修正動議は、その案を備え、理由を付けて30人以上の賛成議員と連署してあらかじめ議長に修正案を提出する場合に議題となる(「国会法」第95条第1項)。

本会議で修正対象となる原案を委員会修正の対照原案と比較すると、次のように区分することができる。

❚修正文作成の対象となる原案❚

主体 委員会修正の対象原案 本会議修正対象原案
(全員委員会修正の対象原案)
議員(10人以上)発議 委員発議又は政府提出の法律案それ自体 委員会が審査報告した内容の法律案

※ 修正議決した場合:委員会が修正した内容を反映した法律案

※ 原案議決した場合:政府又は議員が発議した法律案それ自体

政府提出
委員会提案 対案 委員会が新たな案を提案するものであるから、委員会修正の対象原案の概念がない。 委員会で提案した対案又は委員会案それ自体
委員会案

したがって、修正文を作成するときは、① 議員が発議し、又は政府が提出した法律案の場合には、委員会が修正する内容で議決したときはその法律案に「委員会が修正した内容を反映した法律案」を原案と、委員会が原案議決したときは「議員発議又は政府提出法律案それ自体」を原案とし、② 対案ㆍ委員会案のように委員会が提出する法律案の場合には、その対案又は委員会案を原案として作成しなければならない。

3.修正案の構成及び作成

修正案は、原案を手入れして改めるものであるから、正式に案を備えて提出する修正案の形式は、原案に対する一部改正法律案の形式で表現される。これに伴い、修正案は、① 提案年月日・提案者・修正理由・修正の主要内容を記載した表紙部に、② 原案に対する修正文及び③ 現行条文(一部改正法律案の場合)と原案をともに比較した修正案条文対比表を付ければよい。

❚修正案の構成(修正案+添付物)❚

区分 構成物 内容 備考
修正案 表紙部
  • 修正案の題名
  • 提案年月日
  • 提案者
  • 修正理由
  • 修正の主要内容
  • 一般的な法律案の表紙部作成と類似
本文部
  • 修正文
  • 原案を基準として修正文を作成
修正案条文対比表
  • 修正案条文対比表
  • 現行法・原案と修正案を比較

※ 制定案・全部改正案の場合には、原案と修正案の比較

添付物 原案の表紙部
  • 法律案の題名
  • 提案年月日
  • 提案者
  • 提案理由
  • 主要内容
  • 原案に対する修正事項
  • 本会議に報告される審査報告書には添付しない。
  • 修正案の内容を提案理由及び主要内容に付記

※ 委員会議決のための審査時にのみ活用

法律案
  • 修正案の内容が反映された現行条文に対する改正文
  • 政府に移送される公布文となるから、修正内容が正確に反映されているか確認が必要
新旧条文対比表
  • 現行条文と修正案の内容が含まれた改正案の内容の比較
  • 一部改正法律案にのみ該当*5

修正内容が反映された法律案の全体内容が分かるよう修正案のつぎに、添付物としては、① 原案に対する修正事項が含まれた原案の表紙部、② 修正内容を反映した法律案、③ 新旧条文対比表(一部改正法律案の場合)を付ける。

イ.表紙部

1)修正案の題名

修正案の題名も、制定・改正法律案と同一に分かち書きをする。原案の題名に付けて、「(原案の題名)に対する修正案」と表示する。

[例示]修正案の題名

一部改正法律案 社会保障基本法一部改正法律案に対する修正案
全部改正法律案 不動産登記法全部改正法律案に対する修正案
制定法律案 国民年金及び職域年金の連携に関する法律案に対する修正案
委員会対案 弁護士法一部改正法律案(対案)に対する修正案
委員会案 行政規制基本法一部改正法律案に対する修正案

[訳註]韓国語ではおおよそ文節ごとに分かち書きをするので、実際には「国民年金 及び 職域年金の 連携に 関する 法律案に 対する 修正案」のような表記となる。しかし、修正案について説明する上ではあまり重要でないので、本稿では詰めて翻訳している。

2)議案番号欄の省略

修正案は、原案に付随する案であって、原案と別個に存在する独立した案ではないから、議案番号欄は設けない。

3)提案年月日(発議年月日)及び提案者(発議者)

所管委員会や全員委員会が提案する修正案には、「提案年月日」及び「提案者」を、所管委員会の委員の動議又は本会議での議員の動議で発議する修正案には「発議年月日」、「発議者」及び賛成者」を明示する。

委員会提案修正案 委員の修正動議 本会議修正案

¦⇐前揃え

¦提案年月日:2019. 6.  .

¦提 案 者:○○○○委員長

  • 提案年月日:所管委員会の議決日付
    (通常「月」までのみ記載)
  • 提案者:提案委員会の委員長

¦⇐前揃え

¦発議年月日:2019. 6.  .

¦発 議 者:○○○議員

¦賛 成 者:△△人

  • 発議年月日:修正動議を提出した日付
  • 発議者:修正動議の提出議員
4)修正理由

修正理由は、法律案の提案理由作成要領に準じて原案を修正する理由、原案の問題点、修正案の期待効果等を理解しやすく明瞭に箇条式で作成する。

5)修正の主要内容

法律案の主要内容作成要領に準じて、修正文に表現された修正案の内容のうちで重要な事項を、原案と修正内容が対比されるように箇条式で記載し、修正事項が簡単な場合には、「修正理由及び修正の主要内容」として統合して作成することができる。

各修正の主要内容の末尾に該当条項を表示することも法律案の主要内容の作成要領に準ずるが、修正案は原案にある事項を修正するものであるから条項の前に「案」の字を付けて括弧で表示する。ただし、原案にない現行条項を修正する場合には、「案」の字を付けず、当該条項を直接明示して括弧で表示する。

[例示]修正理由及び修正の主要内容の作成

住居給与法一部改正法律案に対する修正案

提案年月日:2017. 9. .

提 案 者:国土交通委員長

修正理由

現行法に情報の種類により異なって規定(金融情報:5年以下の懲役又は罰金、信用・保険情報:3年以下の懲役又は罰金)された個人情報の目的外使用及び提供・漏洩行為に対する処罰を個人情報保護に関する基本法である「個人情報保護法」の罰則水準(5年以下の懲役又は5千万ウォン以下の罰金)と同一に調整し、住居給与の実施及び適正性の確認のための申請調査・確認調査にあたり取得した調査結果と情報・資料についての「調査結果台帳の作成」及び「目的外使用禁止等の義務」が明示されていない一部調査方法について、整備必要事項を反映して修正する。

修正の主要内容

イ.関係機関に対する協力要請を通じた調査結果及び取得した情報・資料について、「調査結果台帳の作成」及び「目的外使用の禁止等の義務」を明示する(第13条第5項及び第6項)。

ロ.金融情報及び信用情報・保険情報の目的外使用及び提供・漏洩行為に対する処罰を情報の種類による区別なく、個人情報保護に関する基本法である「個人情報保護法」の罰則水準(5年以下の懲役又は5千万ウォン以下の罰金)と同一に修正する(案第21条及び第23条)。

ロ.本文部

1)冒頭修正文

本文部の冒頭修正文は、「(原案の題名)の一部を次のように修正する。」と作成する。修正案は、原案に依存し、原案に従属するため、原案の全部を修正するという概念は想定しがたいから、「一部を」修正するという文句を失念しないようにする。

 

[例示]冒頭修正文の作成

一部改正法律案

社会保障基本法一部改正法律案の一部を次のように修正する。

社会保障基本法一部改正法律案を次のように修正する。(×)

全部改正法律案 不動産登記法全部改正法律案の一部を次のように修正する。
制定法律案 国民年金及び職域年金の連携に関する法律案の一部を次のように修正する。
委員会対案 弁護士法一部改正法律案(対案)の一部を次のように修正する。
委員会案 行政規制基本法一部改正法律案の一部を次のように修正する。
2)修正文
イ)作成原則

1つ目に、修正文の作成は、一部改正法律案の改正文作成方法と同じである。修正案は、原案を前提としてその原案の一部を修正するものであるから、原案が制定法律案・全部改正法律案である場合にも、修正文の作成は、一部改正法律案の改正文作成方法と同一に表現される。

2つ目に、修正文の作成基準は、原案を基準とする。修正案は一部改正法律案等の原案を改めるものであるから、修正文の作成対象は原案を基準とする。ただし、修正案で原案にない内容を追加する場合には、現行法律が基準となる。参考まで、修正内容を反映した添付法律案は、現行法律が基準となる。

[例示]修正文の作成
  • 改正対象法律条文

第82条(罰則)(…)1年以下の懲役又は300万ウォン以下の罰金に処する。

  • 原案(一部改正法律案)

第82条中「300万ウォン」を「2千万ウォン」にする。

  • 修正案

案第82条中「2千万ウォン」を「500万ウォン」にする。

  • 修正案条文対比表

修正案条文対比表

現行 改正案 修正案

第82条(罰則)(…)1年以下の懲役又は300万ウォン以下の罰金に処する。

第82条(罰則)(…)1年以下の懲役又は2千万ウォン以下の罰金に処する。

第82条(罰則)(…)1年以下の懲役又は500万ウォン以下の罰金に処する。

  • 添付法律案
第82条中「300万ウォン」を「500万ウォン」にする。
  • 添付新旧条文対比表

新旧条文対比表

現行 改正案

第82条(罰則)(…)1年以下の懲役又は300万ウォン以下の罰金に処する。

第82条(罰則)(…)1年以下の懲役又は500万ウォン以下の罰金に処する。

ロ)修正文作成時の留意事項

1つ目に、条文の条番号の前に「案」を記載するか否かに関心を払わなければならない。修正対象である原案の内容を特定するため、条番号の前に「案」を付ける。原案中削除された条文を現行どおりにおくための修正案の場合にも、削除された条文が改正案に含まれているから、当該条文の条番号の前に「案」を付ける。章・節の場合も、同じ趣旨から、これを適用しなければならない。ただし、原案の改正事項に含まれない現行条項を修正する場合には、「案」の字を付けず、一般的な改正方式と同一に当該条文を明示して作成する。

[例示]一部改正された事項を現行どおりに修正する場合

  • 改正対象法律条文

第3条(構成)(…)大統領が委嘱する7千名以上の諮問委員(以下「委員」という。)で構成する。

  • 原案(一部改正法律案)

第3条中「7千名」を「2万名」にする。

  • 修正案

案第3条中「2万名」を現行どおりにするため「7千名」にする。

  • 修正案条文対比表

修正案条文対比表

現行 改正案 修正案

第3条(構成)(…)7千名以上の諮問委員(以下「委員」という。)で構成する。

第3条(構成)(…)2万名以上の諮問委員(以下「委員」という。)で構成する。

第3条(構成)(…)7千名以上の諮問委員(以下「委員」という。)で構成する。

  • 添付法律案

(現行法の内容どおり修正されたから、関連改正文なし。)

2つ目に、原案で削除された条文や改正された条文の内容を現行どおりにおくための修正文には、「現行どおりにするため」を明記するようにする。修正内容を反映した添付法律案を作成する際、その趣旨を明白に把握する必要があるためである。

3つ目に、原案で削除された条・項・号・目等の条文全体を現行どおりにおくための修正文には、「新設する」と表記する。修正案で現行どおりにおく条・項・号・目等の当該条文が改正案の基準で見るとき、内容を新設するものであるから、「新設する」という表現を用いなければならない。

[例示]改正法律案で削除された条文を現行どおりに修正する場合

  • 改正対象法律条文

第16条(退職等)① 委員が次の各号のいずれか一に該当するときは、委員の職から退職される。

1.ㆍ 2. (省略)

3. 第10条第1号に該当する委員が地方議会議員の職を喪失したとき

  • 原案(一部改正法律案)

第16条第1項第3号を削除する。

  • 修正案

案第16条第1項第3号を現行どおりにするため同項に第3号を次のように新設する。

3. 第10条第1号に該当する委員が地方議会議員の職を喪失したとき

  • 修正案条文対比表

修正案条文対比表

現行 改正案 修正案

第16条(退職等)①(…)

1.ㆍ 2. (省略)

3. 第10条第1号に該当する委員が地方議会議員の職を喪失したとき

②(省 略)

第16条(退職等)①(…)

1.ㆍ 2. (現行と同じ。)

〈削 除〉

②(現行と同じ。)

第16条(退職等)①(…)

1.ㆍ 2. (改正案と同じ。)

3. 第10条第1号に該当する委員が地方議会議員の職を喪失したとき

②(改正案と同じ。)

  • 添付法律案

(現行法の内容どおり修正されたから、関連改正文なし。)

4つ目に、原案で改正された条・項・号・目等の条文全体を現行どおりにおくための修正文には、「次のようにする」と表記し、全部改正する方式で作成する。

[例示]一部改正法律案で全部改正された条文を現行どおりに修正する場合

  • 改正対象法律条文

第8条(退職等)委員が破産の宣告を受けたときは、委員の職から退職される。

  • 原案(一部改正法律案)

第16条第1項第3号を削除する。

  • 修正案

第8条を次のようにする。

第8条(欠格事由)破産宣告を受け、復権されていない者は、委員になることができない。

  • 修正案条文対比表

修正案条文対比表

現行 改正案 修正案

第8条(退職等)委員が破産の宣告を受けたときは、委員の職から退職される。

第8条(欠格事由)破産宣告を受け、復権されていない者は、委員になることができない。

第8条(退職等)委員が破産の宣告を受けたときは、委員の職から退職される。

  • 添付法律案

(現行法の内容どおり修正されたから、関連改正文なし。)

ハ)委員会審査中改正対象の現行条項が改正された場合

立法活動が活発化するに伴い、法律案提案当時改正対象となっていた現行法律が法律案の審議過程で既に改正されている場合が発生しているから、修正案作成過程で次の事項に留意する。

(1) 修正案提案の可能性

原則として、修正案は、原案の内容、即ち法律案の提案者の改正意思(「第○条中「A」を「B」にする。」における「B]の部分)を修正するものであるから、改正対象である現行条文(「A」の部分)の変更を修正案の作成を通じて反映することは、修正案の概念と一致するものではない。

したがって、現行条項の改正により法律案の趣旨が変更されうる場合、発議者は、その法律案を撤回し、新たな法律案を提案する等の方案を講ずることができる。

しかし、法律案の提出者の明示的な撤回意思がない場合には、改正された現行条文を基礎として既存発議意思を維持するものであると解せられ、委員会は、所管法律案に対する幅広い修正権限があるから、改正された現行条文を基準として修正案を提案することも可能であると解さねばならない。

(2) 修正案作成の具体的方法

この場合、修正案は、条・項・号・目単位を全部改正する方式で作成することにより、改正前の条文や改正された現行条文を修正文で表現しない方案が考えられる。また、修正案条文対比表は、発議当時の法律と現行法律等を明確に表示するため、「発議当時の現行法律-修正案提案当時の現行法律-改正案-修正案」の4段対比表を使用する。添付法律案の新旧条文対比表は、改正された現行条文を基準として作成する。

[例示]委員会審査中の現行条項の改正と修正文の作成*6

  • 改正案提出当時の現行条項

警察公務員保健安全及び福祉基本法

[2014. 11. 19. 法律第12844号により他法改正されたもの]

第7条(退職等警察公務員保健安全及び福祉増進政策審議委員会)① 警察公務員に対する保健安全及び福祉増進の政策の樹立並びにその施行等に関する事項を審議するため、警察庁に警察公務員保健安全及び福祉増進政策審議委員会(以下「委員会」という。)をおくが、国民安全処所属警察公務員に関する事項を審議するための委員会は国民安全処におく。

  • 委員会審査中の現行条項の改正

警察公務員保健安全及び福祉基本法

[2017. 7. 26. 法律第14839号により他法改正されたもの]

第7条(退職等警察公務員保健安全及び福祉増進政策審議委員会)① 警察公務員に対する保健安全及び福祉増進の政策の樹立並びにその施行等に関する事項を審議するため、警察庁及び海洋警察庁に警察公務員保健安全及び福祉増進政策審議委員会(以下「委員会」という。)をおく。

時期 改正関連状況 細部内容
2016.11.18. 警察公務員保健安全及び福祉基本法一部改正法律案の発議 第7条の改正:警察公務員に対する保健安全及び福祉増進の政策事項を審議するため、警察庁及び国民安全処が各々運営する警察公務員保健安全及び福祉増進政策審議委員会を統合する。
2017.7.26 法律第14839号警察公務員保健安全及び福祉基本法一部改正法律の公布・施行 国民安全処と行政自治部を〔訳註:総務省に相当〕統合して行政安全部を新設し、海洋安全の確保のため海洋水産部長官所属下に海洋警察庁を新設する内容の政府組織法一部改正法律が施行される。
2017.8. 所管常任委員会で2016. 11. 18.発議された警察公務員保健安全及び福祉基本法一部改正法律案を修正議決することとする。 案第7条第1項等を修正:警察公務員保健安全及び福祉増進政策審議委員会を警察庁及び海洋警察庁が共同運営するようにする。
  • 原案の改正文

第7条第1項中「警察庁に警察公務員保健安全及び福祉増進政策審議委員会(以下「委員会」という。)をおくが、国民安全処所属警察公務員に関する事項を審議するための委員会は国民安全処におく」を「警察庁及び国民安全処が共同で運営する警察公務員保健安全及び福祉増進政策審議委員会(以下「委員会」という。)をおく」とし、(…)

  • 修正案の修正文

案第7条第1項を次のようにする。

① 警察公務員に対する保健安全及び福祉増進の政策の樹立並びにその施行等に関する事項を審議するため、警察庁及び海洋警察庁が共同で運営する警察公務員保健安全及び福祉増進政策審議委員会(以下「委員会」という。)をおく。

  • 修正案条文対比表

修正案条文対比表

法律第14839号により改正される前の法律 現行 改正案 修正案

警察公務員保健安全及び福祉基本法

第7条(退職等警察公務員保健安全及び福祉増進政策審議委員会)① 警察公務員に対する保健安全及び福祉増進の政策の樹立並びにその施行等に関する事項を審議するため、警察庁に警察公務員保健安全及び福祉増進政策審議委員会(以下「委員会」という。)をおくが、国民安全処所属警察公務員に関する事項を審議するための委員会は国民安全処におく

警察公務員保健安全及び福祉基本法

第7条(退職等警察公務員保健安全及び福祉増進政策審議委員会)① 警察公務員に対する保健安全及び福祉増進の政策の樹立並びにその施行等に関する事項を審議するため、警察庁及び海洋警察庁に警察公務員保健安全及び福祉増進政策審議委員会(以下「委員会」という。)をおく

警察公務員保健安全及び福祉基本法

第7条(退職等警察公務員保健安全及び福祉増進政策審議委員会)① 警察公務員に対する保健安全及び福祉増進の政策の樹立並びにその施行等に関する事項を審議するため、警察庁及び国民安全処が共同で運営する警察公務員保健安全及び福祉増進政策審議委員会(以下「委員会」という。)をおく。

警察公務員保健安全及び福祉基本法

第7条(退職等警察公務員保健安全及び福祉増進政策審議委員会)① 警察公務員に対する保健安全及び福祉増進の政策の樹立並びにその施行等に関する事項を審議するため、警察庁及び海洋警察庁が共同で運営する警察公務員保健安全及び福祉増進政策審議委員会(以下「委員会」という。)をおく。

  • 添付法律案

第7条第1項を次のようにする。

① 警察公務員に対する保健安全及び福祉増進の政策の樹立並びにその施行等に関する事項を審議するため、警察庁及び海洋警察庁が共同で運営する警察公務員保健安全及び福祉増進政策審議委員会(以下「委員会」という。)をおく。

  • 添付新旧条文対比表

新旧条文対比表

現行 改正案

警察公務員保健安全及び福祉基本法

第7条(退職等警察公務員保健安全及び福祉増進政策審議委員会)① 警察公務員に対する保健安全及び福祉増進の政策の樹立並びにその施行等に関する事項を審議するため、警察庁及び海洋警察庁に警察公務員保健安全及び福祉増進政策審議委員会(以下「委員会」という。)をおく。

警察公務員保健安全及び福祉基本法

第7条(退職等警察公務員保健安全及び福祉増進政策審議委員会)① 警察公務員に対する保健安全及び福祉増進の政策の樹立並びにその施行等に関する事項を審議するため、警察庁及び海洋警察庁が共同で運営する警察公務員保健安全及び福祉増進政策審議委員会(以下「委員会」という。)をおく。

 

3)修正案の附則

修正案は、原案に依存して原案を修正するものに過ぎないから、改正案等とは異なり修正案についての別途の附則は認められない。ただし、原案の附則内容を修正案で修正(廃止・新設する場合を含む。)することはできるが、この場合、修正案で修正した原因の附則内容は、修正案の添付物である法律案の附則にのみ修正された原案の附則として表現される。

[例示]原案の附則を修正する場合

  • 原案(一部改正法律案)

附  則

第1条(施行日)この法律は、公布後3個月が経過した日から施行する。

  • 修正案

案附則第1条中「公布後3個月が経過した日」を「公布の日」にする。

  • 修正案条文対比表

修正案条文対比表

改正案 修正案

附  則

第1条(施行日)この法律は、公布後3個月が経過した日から施行する。

附  則

第1条(施行日)------公布の日--------------。

※ 審査対象法律案の附則のみを修正する場合には、2者修正案条文対比表を作成する。しかし、審査対象法律案の本則及び附則を全て修正する場合には、附則についても3者修正案条文対比表を作成する。
  • 添付法律案

附  則

第1条(施行日)この法律は、公布の日から施行する。

ハ.修正案条文対比表

一部改正法律案の場合には3者(現行-改正案-修正案)修正案条文対比表を、制定法律案・全部改正法律案の場合には2者(原案-修正案)修正案条文対比表を作成する。

[例示]修正案条文対比表の様式

  • 制定・全部改正法律案の修正案条文対比表

修正案条文対比表

改正案 修正案
   
  • 制定・全部改正法律案の修正案条文対比表

修正案条文対比表

現行 改正案 修正案
〈新 設〉

第36条の2(消滅時効の中断)① 第33条第1項による紛争調停の申立は、時効中断の効力を有する。ただし、次の各号のいずれか一に該当する事由があるときは、この限りでない。

1. 紛争調停の申立が取り下げられ、調停が成立しなかったとき

第36条の2(消滅時効の中断)① ------------------消滅時効中断-----。---、各号のいずれか一に該当する事由があるとき-----------。

〈削 除〉

修正案条文対比表を作成する方式は、改正案条文対比表を作成する場合と基本的に同一であるが、次のような点で3者修正案条文対比表だけの特徴*7がある。

① 原案の条文対比表の一番右側に修正案欄を追加する。

② 修正案条文対比表の修正案欄は、すぐ左側の欄(改正案欄)を基準として、変化した部分のみを太字及び下線で表記し、同一の部分は、下線なしに点線(---)で表記することを原則とする。改正案で改正しようとする内容のうち、一部のみを修正する場合には、改正しようとする内容全体に既に下線が引かれているから、下線のみでは重ねて修正しようとする部分を特定することができない。このような場合には、重ねて修正される部分は、太字で特定して表現するようにする。一方、修正案の修正文を「次のようにする」と全部改正する形式にしたのであれば、改正案と修正案の全部に太字及び下線が表記されなければならない。

[例示]改正案の一部内容を修正する場合

軍務員人事法一部改正法律案に対する修正案(修正案条文対比表)

現行 改正案 修正案

第44条(別定軍務員)① 戦時・事変等の国家非常時及び職務の内容及び責任の特殊性等を考慮して大統領令で定める場合には、別定軍務員をおくことができる。

② 別定軍務員は、「国家公務員法」上の特殊経歴職公務員のうち、別定職公務員とみなす。ただし、任用・服務・報酬・懲戒その他必要な事項は、大統領令で定める。

第44条(国家非常時の軍務員の任用に関する特例)戦時・事変等の国家非常時に任用される軍務員については、この法律の規定にもかかわらず、任用・服務・報酬・懲戒その他必要な事項について大統領令で別途定めることができる。

第44条(国家非常時の軍務員の任用に関する特例)------------------------------------------任用・服務・報酬-------------------------------。

③ 条・項・号・目を各々の基本単位として、その単位に変動がない場合には、その単位全体を修正案欄に「(改正案と同じ。)」又は「(改正案第○条[項・号・目]と同じ。)」と表記する。例えば、項が数号で構成された場合に、改正案で改正された特定の号の内容を更に修正するときは、改正及び修正されていない各号以外の部分は基本単位でないから改正案及び修正案欄において点線(---)で表記し、変動がない号は改正案欄で「(現行と同じ。)」、修正案欄で「(改正案と同じ。)」と表記する。

[例示]改正案の一部号を修正しない場合

電気事業法一部改正法律案に対する修正案(修正案条文対比表)

現行 改正案 修正案

第39条(会員の資格)韓国電力取引所の会員は、次の各号の者とする。

1.~7. (省略)

〈新 設〉

 

〈新 設〉

 

第39条(会員の資格)---------------------。

1.~7. (現行と同じ。)

8. 電力市場で電力取引をする電気自動車充電事業者

9. 電力市場で電力取引をする小規模電力仲介事業者

第39条(会員の資格)---------------------。

1.~7. (改正案と同じ。)

〈削 除〉

 

8.(改正案第9号と同じ。)

 

④ 修正案条文対比表で改正案欄に全く現れていない現行条文を修正しようとする場合*8において、現行欄には現行条文を、改正案欄には「(現行と同じ。)」を各々追加し、現行欄の変わった部分と修正案欄の変わった部分に各々太字及び下線を表記する。そのほか、変わっていない部分は、下線なしに点線(---)で表示する。

[例示]改正案の条文対比表に示されていない現行条文を修正する場合

重症障害者生産品優先購買特別法一部改正法律案に対する修正案(修正案条文対比表)

現行 改正案 修正案

第21条(聴聞)保健福祉部長官は、次の各号のいずれか一に該当する処分をしようとするときは、聴聞をしなければならない。

1. 第10条による重症障害者生産品の生産施設の指定取消

2. (省 略)

第21条(聴聞)-------------------------------------------------。

1. (現行と同じ。)

 

2. (現行と同じ。)

第21条(聴聞)-------------------------------------------------。

1. ---------------営業停止及び指定取消

 

2. (改正案と同じ。)

⑤ 修正案条文対比表の改正案欄に全く現れていない条文を修正案で新設しようとする場合*9には、現行欄には空欄を、改正案欄には「〈新∨∨設〉」を太字及び下線で表記して各々追加する。修正案欄には、新設される条文を太字で下線とともに表示する。

[例示]改正案の条文対比表に示されていない条文を新設する場合

建設産業基本法一部改正法律案に対する修正案(修正案条文対比表)

現行 改正案 修正案
 

〈新 設〉

第68条の4(タワークレーン貸与契約の適正性審査等)① 建設業者が「建設機械管理法」第2条第1項第1号による建設機械のうち、タワークレーンについて建設機械貸与業者と貸与契約を締結した場合において、国土交通部令で定めるところにより、発注者に通知しなければならない。

⑥ 修正案条文対比表の改正案欄に全く現れていない現行条文を修正案で削除しようとする場合には、まず現行欄に現行条文を太字及び下線で表示する。改正案欄には「(現行と同じ。)」を表記し、修正案欄には「〈削∨∨除〉」を太字及び下線で表記する。

[例示]改正案の条文対比表に示されていない現行条文を削除する場合

ホスピス緩和医療及び臨終過程にある患者の延命医療決定に関する法律一部改正法律案に対する修正案(修正案条文対比表)

現行 改正案 修正案

第39条(罰則)次の各号のいずれか一に該当する者は、3年以下の懲役又は3千万ウォン以下の罰金に処する。

1. 第15条に違反して延命医療中断等決定の履行の対象でない者に対し、延命医療中断等決定の履行をした者

2.・3. (省 略)

第39条(罰則)-----------------------------------------。

1. (現行と同じ。)

 

 

2.・3. (現行と同じ。)

第39条(罰則)-----------------------------------------。

〈削 除〉

 

 

2.・3. (改正案と同じ。)

⑦ 修正案条文対比表は、修正文に規定された全ての条文を対象として作成されなければならない。ただし、政府組織の改編に伴い修正案で長官の名称を変更する場合等、多数条項において同一事項を修正する場合には、例外的に審査の効率化と立法経済性の側面から、修正文の末尾で一括改正方式で規定し、修正案条文対比表でもこれを省略することができる。

4.添付物

イ.原案の表紙部(提案理由及び主要内容)

1)提案理由及び主要内容

修正案では、修正された後の法律案の全体を知りうる手段がないから、効率的な法案審査のため、原案の提案理由及び主要内容を添付する。

2)原案に対する修正事項

原案の提案理由及び主要内容の次には、「原案に対する修正事項」を付記するようにする。

修正案の場合には、「修正案-添付物(原案の提案理由・主要内容、修正案の内容が反映された法律案、新旧条文対比表)」の順序で編綴されているから、原案の提案理由及び主要内容の次に「原案に対する修正事項」が付記されていない場合、原案の表紙部(提案理由・主要内容)と法律案(修正案の内容が反映されたもの)の内容が一致しない場合があり、法律案の全体的な内容を理解する際にも、困難がありうる。したがって、委員会審査の便宜のため、次の例示のように、原案の提案理由及び主要内容の次に「原案に対する修正事項」を付記するようにする。

委員会修正案を本会議に報告される審査報告書に添付して作成する場合には、審査報告書の冒頭に提案説明の要旨が記載されるから、原案の提案理由、主要内容及び原案に対する修正事項を含めた原案の表紙部を別途添付しない。

[例示]原案の提案理由及び主要内容への修正事項の付記

  • 翻訳省略 

ロ.法律案

原案の改正文に修正案の内容を反映して改正文を作成する。修正案の委員会議決後、本会議に審査報告するときは、法制司法委員会の体系・字句審査内容も反映するようにする。

ハ.新旧条文対比表

新旧条文対比表は、現行条文を基準として修正された事項を反映して作成しなければならない。ただし、原案が制定法律案や全部改正法律案である場合には、省略する。

[例示]委員会修正案の構成例(修正案+添付物)

  • 翻訳省略

 

*1:「国会法」

第95条(修正動議)① 議案に対する修正動議は、その案を備え、理由を付け、議員30名以上の賛成議員と連署し、あらかじめ議長に提出しなければならない。ただし、予算案に対する修正動議は、議員50名以上の賛成がなければならない。

② 委員会で審査報告した修正案は、賛成なくして議題となる。

③ 委員会は、所管事項外の案件については、修正案を提出することができない。

④ 議案に対する対案は委員会でその原案を審査する間に提出しなければならず、議長はその対案をその委員会に回付する。

⑤ 第1項による修正動議は、原案又は委員会で審査報告(第51条により委員会で提案する場合を含む。)した案の趣旨及び内容と直接関連がなければならない。ただし、議長が各交渉団体の代表議員と合意をする場合には、この限りでない。

*2:委員会の審査過程で法律案に対する修正案を動議するときは、原則として、本会議修正案のように正式に案を備え、理由を付けてあらかじめ委員長に提出することが本会議の修正動議を準用する「国会法」の委員会規定に照らして望ましい(☞ p.211修正案の構成及び作成参照)。作成時間の不足等やむを得ない事由がある場合でも、修正内容が複雑であったり、重要な事項であるときは、提案理由・主要内容等を口頭で説明したとしても、本会議修正案のように正式に案を備えるか、最小限原案との修正案条文対比表を作成し、所属委員が修正される内容を容易に理解することができるようにしなければならない。

*3:本会議で委員会の修正案を審議する場合には、所管委員会の委員長が修正案と原案を合わせて1件として審査報告するから、これを一括して表決に付し可否を決定する。したがって、委員会修正案が可決されれば表決が終了し、否決されても当初の原案は表決しない。これとは異なり、全員委員会修正案や本会議修正案の場合、修正案が全部否決されたときは、原案について表決する。

*4:全員委員会は、審査議案を本会議に付議しないことと議決することはできず、委員会案や対案を提案することができず修正案のみを提出することができる。

*5:全部改正・制定法律案に対する修正案の場合には、修正案条文対比表は作成しなければならないが、添付物の新旧条文対比表は作成しない。ただし、全部改正法律案に対する修正案の場合には、審査の便宜のため、新旧条文対比表を作成する例外的事例もある。

*6:「警察公務員保健安全及び福祉基本法一部改正法律案」(議案番号第2003732号)の審査経過を参考とし、再構成する。

*7:全部改正・制定法律案に対する修正案条文対比表は、改正案条文対比表と同一の方法で作成する。

*8:この場合、改正しようとする条文は、原案の趣旨及び内容と直接関連性がなければならない。

*9:この場合、新設される条文は、原案の趣旨及び内容と直接関連性がなければならない。