導入
戦後初期に制定された法令の中には、内見出し*1のものがあった。
通常、これらの法令を改正するときは、元の法令に溶け込む原則からして、新設する条にも、全て内見出しを付し、共通見出しや、章名等と重複する場合に省略することは認められない扱いとなると思われる。
ところで、民法の改正の際に、第1編から第3編までを事実上全改したことに合わせて、第4編・第5編にも必要な改正を行うとともに、全体的に項番号を付する改正を行ったことがある。
このことからすると、仮に法令の一定の範囲を全面改正する場合に、当該全面改正される部分以外の部分について、見出しを外見出し*2に改める改正を行うことも理屈としては可能と思われる。
もっとも、法令でそのようなことが行われるとは思えないが、一つの思考実験として改め文を考えてみようと思う。
思考
まず、次のような案が考えられると思う。
- 第1案
第○条の見出しを削り、同条に見出しとして「(外見出し)」を付する。
通常、「見出しとして・・・付する」とすれば自動的に外見出しになることに着目して、共通見出しを削る方式に準じた改正方式としたものである。
内見出しの法令でも、付けなおした見出しが外見出しになるのかが必ずしも明確でないというのが難点である。
- 第2案
第○条の見出しを削り、同条に外見出しとして「(外見出し)」を付する。
第1案の難点を解消するため、「外見出し」として付することを明示してみた。
「外見出し」という新たな用語を一部改正法令に導入することになってしまうのが難点である。
- 第3案
第○条の見出しを削り、同条の前に同条の見出しとして「(外見出し)」を付する。
更に第2案の難点を解消するため、「同条の前に」として見出しの追加される位置を明示してみた。
新たな用語を導入しないというメリットはあるものの、「同条の前に」という、通常共通見出しの新設に用いられる用語を単独見出しの新設に用いることとなるのが難点である。
- 第4案
第○条(見出しを含む。)中「第○条(内見出し)」を「 (外見出し)
第○条 」に改める。
第1案から第3案までの難点は、結局見出しを論理的に把握しようとしたことに発端するものである。このため、見出し及び条名を図画的に把握して改正することとしてみた。
用語の紛れはないものの、(1)1行であったものが2行になることで、第1項が外見出しのカッコトジの下に続くのか、第○条の下に続くのか、(2)第○条の下に続いてくれるとして、1字下げになるのか、字下げなしに直接続くのか、あるいは外見出しのカッコトジの次の位置にまで字下げされてしまうのかが、必ずしも明確でないのが難点である。
- 第5案
第○条(見出しを含む。)中「第○条(内見出し)第1項の内容。」を「 (外見出し)
第○条 第1項の内容。」に改める。
第1案から第3案までの難点及び第4案の難点を解消するため、第○条の第1項全体を含めて改正することとしてみた。
唯一の難点は、第1項全体を引用することとなるので、改め文の分量が多くなることである。
なお、先日Twitterで紹介したように、条全体をカギで捉えて削った例もあることから、このように条の一部をカギで捉えること自体は差し支えないものと考えられる。
結論(?)
個人的には、簡潔な第1案・第4案くらいが良いのかなと思った。